夕刊フジが東スポ化？ 実は幸福の科学のふんどし担ぎ

8月31日、産業経済新聞東京本社が発行する夕刊紙「夕刊フジ」が、都内の駅売店の見出し広告に「宇宙人インタビュー成功!?」という見出しを掲載。とうとうフジも東スポ化か？と期待に胸をふくらませて購入してみると、見開き2ページにも及ぶ件の記事は、幸福の科学出版の広告でした。宇宙人のインタビューを読めると思った読者を釣って幸福の科学の広告を読ませるという、悪質な広告手法です。


■完全な広告記事

8月31日発売の夕刊フジ（9月1日号）に掲載された「宇宙人インタビューに成功!?」は、見開き2ページに及ぶ「特集」記事。1ページ目では、UFO研究家の竹本良氏が、UFOの目撃情報やNASAの秘密情報といった、定番の宇宙人話を披露しています。しかし、いっこうに宇宙人へのインタビューは出てきません。しかし2ページ目でついに、宇宙人が秘密のベールを脱ぎます。

【夕刊フジ 2011年年09月01日号（8月31日発売）】宇宙人インタビューに成功!?

では、いったい彼らは、いつ頃から、何の目的で地球に来ているのか。その手がかりとなるインタビューが日本で行われた。その衝撃の内容は、「宇宙人リーディング」シリーズとして昨年3月発刊の「『宇宙の法』入門」から、この8月の最新刊まで、すでに9冊が書籍化され発刊されている（いずれも幸福の科学出版）。

そして、あとは全部、幸福の科学出版から発刊された大川隆法総裁の「宇宙人シリーズ」の紹介。そして幸福の科学がUSTREAMで放送している、宇宙人ネタの映像番組「サタデーナイトinエリア５反田」の紹介。前出竹本良氏も、この番組の出演者です。どう見ても幸福の科学出版の広告です。紙面の隅には、「特集」と書かれていますが、広告であるとは一切書かれていません。

■日本トンデモ本大賞受賞作品を読者プレゼント

そして紙面の隅には、大川隆法・著『宇宙人との対話』の読者プレゼント（抽選で10名）の案内も。同書は、本紙既報（大川隆法氏、遂に日本トンデモ本大賞受賞！）の通り、日本トンデモ本大賞2011を受賞した名著です。

【夕刊フジ 2011年年09月01日号（8月31日発売）】宇宙人インタビューに成功!?

『宇宙人との対話』を抽選で10名様にプレゼント。ご希望の方は、はがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記の上、〒100-8160夕刊フジ広告部「宇宙人との対話」プレゼントかかりまで。9月7日（水）消印有効。発表は商品の発送をもってかえさせて頂きます。

締切まで1週間くらいあります。『宇宙人との対話』を読みたい人は、どしどし応募しましょう。

■産経新聞社は「広告として読んで」

これ、ただの大きな広告というだけならどうってことありませんが、夕刊フジは、まるで通常の記事のように見える扱いで、駅売店の見出し広告にまで「宇宙人インタビュー成功!?」と載せていました。よく見ると小さく「幸福の科学出版云々」と書いてあるのですが、ちょっとひどいのではないかと思い、夕刊フジの発行元である産業経済新聞社の読者サービス室に電話してみました。

─駅の売店のチラシて「宇宙人インタビュー成功!?」というのを見て、新聞を買ったんです。でも記事を読んだら、これ、宗教の広告ですよね。

「広告の要素もある特集記事で……」

─でも、見出しにある宇宙人インタビューって、幸福の科学の本の話にしか出て来ないんですよ。広告ですよねえ。

「ああ、そうですね。これは広告ですね」

─ぼく、駅の売店でチラシ見て、宇宙人のインタビューが読めると思って買ったんですよ。なのにただの広告だなんて、ひどくないですか？

「これは、広告として読んでいただければと思います」

広告だとハッキリ言うのは正直でよろしいのですが、ならば見出し広告でも、広告だとわかるような表記をすべきではないでしょうか。宇宙人のインタビューが読みたくて紙面を買った人にしてみれば、これは詐欺同然です。

■夕刊紙業界の事情通も呆れ顔

産経新聞は幸福実現党の1面広告を載せたり、夕刊フジで幸福実現党党首のコラムを連載するなど、産経グループはもともと幸福の科学と「いい付き合い」をしてきています。しかし今回は、ただの広告ではありません。広告を通常の記事であるかのように扱って読者を釣って、130円の新聞代を払わせた上に宗教団体の広告を読ませようという、悪質な広告手法です。

夕刊紙業界に詳しい人物は、本紙の取材にこう語ります。

「これ、読者は広告だなんて思わないでしょ。東スポでさえ、内容はインチキだったとしても、ちゃんと自前の宇宙人記事を載せる。宇宙人の記事だと思わせて広告でした、なんてことしないよ。広告記事を通常の記事のような扱いでふんどし（見出し広告のこと）に載せるなんて、夕刊紙の世界でも前代未聞じゃないの？　産経グループは、こういう手法を恥ずかしいと思わないくらいカネに困っているんだろうか。読者を騙してまで幸福の科学からの広告料がほしいのかね」（事情通）

駅の売店などに貼られる見出し広告は、業界用語で「ふんどし」と呼ばれています。夕刊フジは、文字通り幸福の科学のふんどし担ぎになり下がったというわけです。

■新聞協会「新聞広告掲載基準」違反

　夕刊フジが加盟する社団法人日本新聞協会では、｢新聞広告倫理綱領｣の趣旨に基づいて、新聞広告の掲載基準をこう定めています。今回の夕刊フジの「ふんどし」と紙面が抵触しそうな部分を引用します。

【日本新聞協会】新聞広告掲載基準

以下に該当する広告は掲載しない。

1.　責任の所在が不明確なもの。
（略）
3.　虚偽または誤認されるおそれがあるもの。
　　誤認されるおそれがあるものとは、つぎのようなものをいう。
　　Ⅰ.　編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの。
　　（略）
5.　事実でないのに新聞社が広告主を支持、またはその商品やサービスなどを推奨、あるいは保証しているかのような表現のもの。
（略）
9.　非科学的または迷信に類するもので、読者を迷わせたり、不安を与えるおそれがあるもの。

　どう考えても、今回の夕刊フジの手口は「編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの」に当たりそうです。このことから、上記の5条と9条にも抵触しかねません。一方、産業経済新聞社では、日本新聞協会の広告掲載基準とはちょっと違う基準を設けています。

【産業経済新聞社】産経新聞広告掲載基準＜すべての広告に共通する基準＞

広告の基本に関すること

次のものは掲載しない

（略）
3.　広告の内容、表現があいまいで、広告主体、目的を隠蔽したもの
4.　広告表現が不明確で、読者に誤認を与えるもの。ただし、ティーザー広告などについて、あらかじめ全体企画を本社に提出し、本社が認めたものはこの限りではない

　ティーザー広告とは、英語の「tease（じらす）」から生まれた言葉で、商品などの情報や広告のストーリーなどについて意図的に未完成な状態で読者・視聴者に伝えることで興味をひかせる広告手法です。ただし、これは通常、広告であることを隠して通常の記事であるかのように読者を誤信させる手法を指す言葉ではありません。

　今回の夕刊フジの広告手法は、日本新聞協会・産業経済新聞社双方の広告掲載基準に照らし合わせても、問題がありそうです。

　なお、産業経済新聞社は今回の「宇宙人インタビューに成功!?」を広告だと認めていますが、幸福の科学の機関誌「ザ・リバティ」は、公式サイト上でこれを飽くまでも「特集記事」としており、広告であるとは明示していません（本日発売の「夕刊フジ」に宇宙人記事＋宇宙人リーディング情報が掲載）。＜首都圏私鉄全駅の売店には、「宇宙人インタビュー!?」のチンビラ（垂れ幕）がかかっている＞として、問題の「ふんどし」も堂々と紹介しています。

※ 広告掲載基準に関する記述を追加しました。（2011.08.31）
※ 「ザ・リバティ」に関する記述を追加しました。（2011.09.01）