2010年9月2日木曜日

砂糖玉汚染、公立学校にも=ホメオパシー問題

 今度は、公立中学校の養護教諭が保健室で、生徒にホメオパシーをレメディ(ただの水と砂糖玉)を飲ませていたことが発覚しました。もはやホメオパシー問題報道の第一人者と言える朝日新聞が報じています。


【asahi.com 2010年09月02日】保健室でホメオパシー 沖縄の養護教諭、生徒に砂糖玉

 沖縄県名護市の公立中学校の養護教諭が5年以上前から、保護者や校長、校医の了解を得ずに、民間療法「ホメオパシー」で使う「レメディー」という砂糖玉を、保健室で生徒に日常的に渡していたことがわかった。複数の生徒や卒業生によると、教諭は「普通の薬はいけない」と話していたという。保健室に特別の装置を持ち込み、砂糖玉を加工していたという。校長や同市教育委員会は本人から事情を聴き、中止するよう指導した。
 この養護教諭は、普及団体「日本ホメオパシー医学協会」が認定する療法家。卒業生によると、この中学校に赴任した2006年度当時から、体調不良を訴える生徒にホメオパシー療法で使うレメディーという砂糖玉を渡していたという。レメディーは、植物や昆虫の成分など「症状を起こす物質」を水に薄めて、しみこませた砂糖玉。
(略)
 生徒や卒業生は「頭痛や生理痛で保健室に行くと、『レメディーは副作用がない』と言って渡された」「普通の薬はダメと言われた。部活の遠征にもレメディーを持たされた」などと話している。ある生徒は「熱が出た時も『家で飲みなさい』と渡された」という。
 新型インフルエンザが流行した昨年、「インフルエンザを予防できるレメディー」を渡され、予防接種を受けなかった生徒もいる。
 また、この養護教諭は、砂糖玉をレメディーに変換するという装置を保健室に持ち込んでいた。縦横が約30~40センチほどの装置で、症状に応じて生徒の目の前で砂糖玉を加工していたという。
 一部の生徒は、このレメディーについて「思いこみ薬」と呼んでいた。
(略)

 「砂糖玉をレメディーに変換するという装置を保健室に持ち込んでいた」とは、尋常なハマりようではなさそうです。当然、養護教諭が自腹で買ったものですよね。まさか学校の経費で買ってないですよね。

 記事引用部分の最後の一文が最高です。とても賢い生徒さんです。その保健室の養護教諭が、生徒からバカにされていた様子がうかがえます。中学生でもわかるようなことがわからないのが、ホメオパシー信者ということですね。

 以前、本紙では<【社説】頑張れ朝日新聞! マッチポンプ・ジャーナリズム vs ホメオパシー>で、朝日新聞が過去にホメオパシーを好意的に紹介したり、朝日カルチャーセンターでホメオパシーの講座を開催し、それを朝日新聞紙面で紹介していたことを指摘しました。しかし朝日新聞は過去に、ホメオパシーの問題性を一切報じていなかったわけでもありません。2008年に、今回の問題と似た問題を報じています。

【朝日新聞 2008年05月27日】指導不適切?5人退学 04~06年度、県が事実調査 県立看護学院助産学科/佐賀県

 県立総合看護学院(佐賀市兵庫南3丁目)の助産学科で、04年度から06年度にかけて、毎年何人かが教員の不適切な指導で退学に追い込まれたとして元学生らが訴え、それを受けて、県が調査していることが分かった。複数の元学生が「あなたはおかしい」などと言われて心療内科を受診させられ、「自主退学」という形でやめざるをえなかったとしている。県の佐藤敏行・健康福祉本部長は「元学生らの訴えが事実かどうか現在、調査している」と話している。(編集委員・大久保真紀)
(略)
 自主退学した元学生らによると、教員から「あなたはおかしい」「助産師にはむいていない」などと繰り返し言われ、カウンセリングや心療内科を受診させられたほか、ホメオパシーという療法の薬のようなものを渡され、飲まされたという。
(略)
 総合看護学院の松本公代・学院長は「やめさせたということはない。みな『自主退学』だ。学生たちがついていけなかったのではないか。(産科施設との関係の発言は)自分で判断できる助産師になるようにという指導だったと思う。心療内科の受診も無理強いはしていない」と説明する一方、「ホメオパシーなどの実施は学生にはしないように指導した。教員たちが一生懸命になりすぎた面もあるかもしれない。おかしなことがあれば改善していく」と話している。

 県立総合看護学院助産学科の教諭が学生に対してホメオパシーの砂糖玉を飲ませ、具体的な問題があったわけでもないのに退学に追い込むなどしたということのようです。

 病気や健康上の不調に悩む人にただの砂糖玉を売りつけるホメオパシーそのものが悪質なのは、今年8月以降の朝日新聞の報道によってすでに明らかにされています。しかし公立の教育機関における砂糖玉汚染の問題点はこれだけではなく、常識や社会経験が充分ではない子どもに誤った知識を植えつけたり、他人の健康に関わる仕事に就く可能性が高い学生を砂糖玉信者にしかねないという点でも、かなり重大な問題です。

 日本学術会議のほか日本医師会など科学・医療関係の団体が相次いでホメオパシー否定の声明を発表しています。しかし公立の教育機関まで砂糖玉に汚染されている以上、文科省などもしっかりした見解を出して、実態調査や対策を行うべきではないでしょうか。もちろん、厚労省もです。長妻昭厚労相は、「効果があるか研究」などと言っているようですが、砂糖玉の効果なんか研究するまでもありません。もっとほかにやるべきことがあります。

 余談ですが、最近、大枚はたいて砂糖玉を購入した山口貴士弁護士がブログで、砂糖玉の実物の写真を掲載しつつ、それがいったいどのくらい高額なものなのかを解説しています。

【弁護士山口貴士大いに語る 2010年09月02日】レメディーはセット買いがお得?
(略)
一粒あたり、
580円÷40=約10.2円

ひと瓶、1.5gなので、1gあたり、
580円÷1.5=約386.7円

1kgあたり、38万6700円。

健康問題で悩む人に対し、高額で砂糖玉を売りつける商売。

この事実をホメオパシー問題を考えるに際して見過ごしてはならないと思います。



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2 コメント:

オホーツク海岸の論客 さんのコメント...

朝日新聞の記事は厚生労働省がスクラップにしない事はないでしょうね。

九州の看護学院の一件は別の問題も深く関わっていますけど、ただの砂糖(食品)が万能薬に使われるってのは、私は納得しませんよ。様々な料理(煮物でもお菓子でも)で良い味出す材料(笑)ですし、てんさい(ビートとも言う)の産地でもさとうきびの産地でも変な客とは関わりたくないと思う人は増える事でしょう。

信じる人がやってしまうとしたら、ミッション系の学校でも起こるかも知れませんね。

アマゾンで買える上白糖の広告に笑わせてもらいました。

藤倉善郎 さんのコメント...

> アマゾンで買える上白糖の広告に笑わせてもらいました。

 レメディ1gは上白糖1kgより高い!ってことで(笑)。