2009年7月6日月曜日

キャンパス内における勧誘と信教の自由


【PJニュース 2009年07月04日・06日】藤倉が、関西学院大学での山口貴士弁護士の講演「キャンパス内における勧誘と信教の自由」をリポートしました。

「カルト宗教対策は大学の安全配慮義務」=弁護士が関西学院大で講演(上)

カルト宗教対策「大学は部外専門家と連携を」=弁護士が関西学院大で講演(下)

 大学においては、統一協会(統一教会)系学生組織である「原理研究会」が60年代から活動しており、これまでほとんど野放しにされてきました。団体名からは統一協会とはわからないダミーサークルでの活動も行われています。講演で山口弁護士が述べているように、オウム真理教も学生信者を多く獲得していました。また、摂理や親鸞会といった宗教団体が学生を勧誘しているほか、自己啓発セミナーの勧誘も首都圏と名古屋の大学で問題視されています。


 記事に書かなかった周辺的な話を、ここで書いておきます。


 06年に摂理の問題が騒がれて以降、各大学がカルト対策に関心を持ち始めたのはいいことだと思いますが、大学によって温度差もあるようです。関西では、さまざまな人の口から「京都大学はカルト対策なんか何もしていない」という言葉を聞きました。入学時のオリエンテーションで学生に「宗教勧誘に注意」と呼びかける程度はしているようですが。

 京都大学には、学生サークルである「京都大学新聞社」が発行する「京都大学新聞」があります。これと別に、統一協会系サークルが発行する「京大学生新聞」というものがあります。京都大学新聞によると、京都大学では、統一協会系の「京大学生新聞」も大学公認団体だそうです。

 下記の表は、京都大学新聞の公式サイト内原理研究会・京大学生新聞にご注意より。大学の公認・非公認を問わず、統一協会系の学内新聞はこんなにあります。「○○学生新聞」「○○ジャーナル」という名称が多いようです。大阪大学はひどいですね。「大阪大学新聞(縦題字)」が正規の学内新聞で、「大阪大学新聞(横題字・通称ヨコ新聞)」が統一協会系。
正規の新聞
統一協会・原理研究会系の新聞
東京大学新聞
東大新報
京都大学新聞
京大学生新聞
東北大学新聞
東北大学生新聞
(通称ナマ新聞)

北海道大学新聞
北大学生新聞
九州大学新聞
九大学生新聞
名古屋大学新聞
名大ジャーナル
大阪大学新聞
(縦題字)
大阪大学新聞
(横題字・通称ヨコ新聞)

神戸大学新聞
神戸学生新聞
山形大学新聞
山形大学生新聞
金沢大学新聞
金沢学生新聞
埼玉大学新聞
埼玉学生新聞
鳥取大学新聞
鳥大学生新聞
筑波大学新聞
筑波ジャーナル
岡山大学新聞
岡大ジャーナル
熊本大学新聞
熊大学生新聞
慶應塾生新聞
慶應キャンパス新聞
早稲田大学新聞
(現在革マル系)
早稲田学生新聞
日本大学新聞
日大学生新聞

 統一協会系新聞を購読したから統一協会に勧誘されるというほど単純な話ではありません。むしろ、統一協会が学内新聞を発行するのは、信者獲得より資金集めの側面が強いようです。大学のOBなどに新聞を購読するよう電話勧誘したり、大学創立○周年記念冊子などを発行してOBから寄付を募ったり。こういうことは、正規の学内新聞ではあまりやりません。

 藤倉はかつて、「北海道大学新聞会」に所属して、記事を書いていました。「北海道大学新聞」では受験期・入学期に、「北大学生新聞は統一協会系」であるとして統一協会問題を特集し、受験生・新入生に注意を呼びかけていました。しかし、そこでは霊感商法問題などだけではなく、浅見定雄氏の著書などを根拠にして「統一協会は聖書をパクっているから問題だ」などとする論調が目立ちました。

 記事の担当記者に対してぼくは、「統一協会が聖書をパクっていようが、キリスト教業界で異端(あるいは別宗教)とみなされていようが、そんなのはキリスト教の価値観に過ぎず、世の中にとってはどうでもいいこと。北海道大学新聞はキリスト教の御用メディアではないのだから、キリスト教の論理で統一協会を批判するのは誤りである」という理屈で、ずいぶんケンカしたんですが、理解はしてもらえませんでした。正体を隠して勧誘するという点では、北大内で活動していた日本共産党系学生サークルなども手口は同じでしたが、北海道大学新聞(ノンセクトです)が学生に注意を呼びかけていたのは、基本的に統一協会だけでした。

 一方で、京都大学新聞のサイトを見ると、京都大学新聞の問題意識は、統一協会にのみ向けられているわけではないことがわかります。

原理研究会・京大学生新聞にご注意

統一協会・原理新聞系(原理新聞)の一部は「大学公認」を取得して紙面やウェブサイトに載せ、“大学のお墨付き”であるかのような雰囲気を醸しだそうとしています。しかしながら京都大学などにおける「大学公認」というのは、「団体結成届」を学生部へ3年間提出すれば、いかなる思想信条に基づいていようが、 問題行動をしていようが、自動的に認められるものです。実際、統一協会だけでなく宗教では親鸞会や創価学会の下部団体、政党では共産党の下部団体、さらには過激派の下部団体も、京都大学公認団体リストに名を連ねて活動しています。


 やはり大学内でのカルト対策においては、宗教云々ではなく「反社会的団体を野放しにしていていいのか」という普遍的な問題意識が必要だと思います。


 関西学院大学での山口弁護士の講演会には、学生らしき聴講者もいましたが、大半は大学の教職員のようでした。大学の管理者側が理解を深めることは、カルト対策においては必須だと思います。一方で、京都大学新聞を読んでいると、大学内の学生メディアもカルト対策について一定の役割を果たしている(あるいは果たしうる)という期待を感じました。今後も頑張って欲しいです。

 ちなみに、藤倉が所属していた北海道大学新聞会は、この春、人員難から活動を休止してしまいました。残念です。北大では、「すでに公認団体がある場合、類似団体は公認しない」というルールがあったと記憶していますが、北海道大学新聞がなくなったことで、大学当局が統一協会系「北大学生新聞」を公認するなどという愚を犯さないことを祈ります。

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