2009年8月18日火曜日

死者16人、大阪ビデオ店放火事件のその後・・・サント・ダイミ教との関係はどうなった?

 昨年10月1日未明、大阪の個室ビデオ店放火事件の被告人が、裁判で無罪を主張する方向というニュースが流れました。16人もの死者を出した放火事件の後日報ですが、事件直前に被告人がセント・ダイミ教の施設でダイミ茶を服用していたことが、裁判でどのように扱われるのか、扱われないのか、気になります。


【読売新聞
2009年08月18日大阪のビデオ店放火、被告無罪主張へ…来月14日初公判

 昨年10月、16人が死亡した大阪市浪速区の個室ビデオ店放火事件で、殺人と同未遂、現住建造物等放火の罪で起訴された無職・小川和弘被告(47)が公判で、「火は付けていない」などと全面的に無罪を主張することがわかった。大阪地裁は17日、初公判を9月14日に開くことを決めた。


 小川被告は逮捕当初、「死にたくなって火を付けた。死人などが出るのはわかっていた」と容疑を認めたが、その後、放火や殺意を否認したとされる。

 昨年10月の起訴後、公判前整理手続きが適用され、小川被告は当初の自白について「吸っていたたばこの火を消した記憶がなく、警察に『お前の個室が火元だ』と言われて認めてしまった」と主張しているという。

 公判では、小川被告がいた個室が出火場所かどうかや、自白の任意性などが争点になるとみられる。

 起訴状では、小川被告は昨年10月1日午前2時55分頃、「試写室キャッツなんば店」個室で、自殺を企て、ティッシュペーパーにライターで火を付け、新聞紙などに放火。他の個室にいた男性客22人のうち、16人を一酸化炭素中毒などで殺害、残る6人中4人に重軽傷を負わせた、とされる。


 この事件当時の数少ない後日報として、被告人がダイミ茶を服用していたことが報道されています。


【サンケイ新聞
2008年10月15日【個室ビデオ店放火】幻覚作用のあるダイミ茶を飲む 小川容疑者が事件半日前

 大阪市浪速区の個室ビデオ店「試写室キャッツなんば店」の放火事件で、殺人容疑などで逮捕された無職、小川和弘容疑者(46)が事件の半日前、奈良県内の宗教施設で南米原産の植物を煮出し、幻覚作用をもたらすお茶を飲んでいたことが14日、わかった。同行した男性は「頭がぼーっとして幻覚をみた」と証言。小川容疑者も服用直後に涙を流したり、叫んだりしたが、施設を離れるときには元の落ち着いた状態に戻っていたという。

 小川容疑者が飲んだのは、ブラジル発祥の宗教「サント・ダイミ教」の儀式に用いられる「ダイミ茶」で、幻覚作用の持続時間は約2~6時間とされる。

 小川容疑者の場合、服用から犯行までに10時間以上経過し、幻覚作用は消えていたとみられるが、浪速署捜査本部は、小川容疑者の心理状況に何らかの影響を及ぼしていなかったか慎重に調べる方針。

 関係者によると、小川容疑者は9月29日夜、大阪・心斎橋の路上で出会った露天商の男性(43)に「ハーブを飲みに行こう」と誘われ、30日午後1時ごろ、露天商の知人のミュージシャン(32)と3人で奈良県内の宗教関係者(55)宅を訪問した。

 同宅では、宗教のワークショップが開かれ、祈りの後、午後2時と4時の2回、30ccずつダイミ茶を飲んだ。ミュージシャンは「すぐに頭がぼーっとした」「考えていることが別人の声で聞こえた」と幻覚作用があったことを認めた。

 一方、小川容疑者は1回目の服用後は変わった様子を見せなかったが、2回目の後、テーブルの脚にもたれながら涙を流し始めた。さらに願い事を書く紙を渡され、「そんな資格などない」と泣き叫ぶような声を上げたという。
 3人は午後11時ごろに同宅を出たが、ミュージシャンは「そのころには頭ははっきりしていた」と証言。小川容疑者は「こんなに幸せな気分になれたのは初めてです」と宗教関係者に礼を言っていたという。

 3人は近くの駅で別れ、小川容疑者と露天商は電車で難波に向かった。2人はラーメン店で食事後、翌午前1時半ごろにキャッツに入店。小川容疑者が放火したのは同2時55分ごろで、ダイミ茶の服用から約11時間経っていた。

 宗教関係者は産経新聞の取材に「幸せな気分になった後、大阪のどろどろしたところへ行って精神的にがくっときたのではないか。小川容疑者が帰るときにはちゃんと効果は冷めていた」と話している。

     ◇

 小川容疑者が飲用したダイミ茶は、南米のアマゾン川流域に自生するつる状植物「アヤワスカ」が主原料。煮出して飲むと強い幻覚作用があり、現地では宗教儀式や民間療法に用いられている。

厚労省によると、アヤワスカからは麻薬取締法で規制されている向精神性成分「ジメチルトリプタミン」(DMT)と、薬事法で規制されている「5メドキシDMT」が検出された例があるという。

 このため、アヤワスカの抽出物を所持すると処罰対象になる可能性もある。ただ、同省は「情報が少なく国内にどれだけ入ってきているのか実態がわからない」としており、事実上野放しの状態になっている。

 一方、小川容疑者らに提供した宗教関係者は「ダイミ茶はブラジルの教団本部から送られてくる。合法か非合法かはよくわからないが、これまでずっと使ってきたし、事件後に警察に提出したが何も言われていない」としている。


 ダイミ茶(アヤワスカ茶)に含まれるDMT(ジメチルトリプタミン)は幻覚剤の一種で、薬物規制当局と教団側のあいだで、ダイミ茶を宗教儀式に飲用する権利等について、各国で攻防が続いているようです。最近の判決としては、今年3月に、アメリカのオレゴン地区連邦裁判所が信教の自由を保護するとして、宗教儀式でのダイミ茶の使用を認める判決を下しています(判決文はここ)。ただし、ダイミ茶がこの教団では特定の方法で抽出され、幻覚作用をもたらすほどのDMTを含まない程度の量以上を摂取する事がないなど、管理された使用であることが前提の判決文のように読めます。
 このサンケイのニュース記事を読むかぎり、「ダイミ茶」と「信教の自由」とという言葉は何だかしっくりこない感があります。この放火事件の公判でダイミ茶の影響が弁護側から持ち出されるのかどうかが気になるところですが、この教団の日本での活動実体は、更に気になるところです。

参考
【弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版】2008.11.09個室ビデオ店放火事件と宗教団体サント・ダイミ教(=Santo Daime)との関係 

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