2010年3月18日木曜日

「平和神軍観察会」運営者に最高裁が有罪判決

 ラーメンチェーン店「花月」などを運営する株式会社グロービートジャパンと右翼カルト集団「日本平和神軍」との関係を掲載していたウェブサイト「平和神軍観察会 逝き逝きて平和神軍」の内容が名誉棄損罪にあたるとして争われていた裁判で、最高裁判所が3月15日、サイト運営者の上告を棄却。罰金30万円を命じる東京高裁の判決を支持し、有罪判決が確定しました。

 サイトを運営していたのは、都内の会社員・橋爪研吾氏。橋爪氏は、1999年頃から自身の個人サイト「平和神軍観察会」で、黒須英治氏率いる「日本平和神軍」を批判する文章を掲載。その中で、黒須氏が会長(当時)だったグロービートジャパン社と日本平和神軍が事実上一体の関係にあることについて言及していたことから、グロービート社が橋爪氏に3150万円の損害賠償を請求して民事提訴。橋爪氏に計77万円の賠償を命じた05年5月の東京高裁判決がすでに確定しましたが、グロービート社は刑事告訴も行っており、無罪を主張する橋爪氏が最高裁まで争っていました。

 橋爪氏側の主張は主に、(1)サイトの内容は公共の利害にかかわるものであり、(2)公益目的によって掲載されたものであり、(3)いち市民として可能な範囲での事実確認を行った上で書かれていたことを理由に、名誉棄損の違法性阻却要件(通常、報道などが他人の名誉を傷つけても違法ではないとされる要件)を満たしているというものでした。一審判決は、グロービート社と平和神軍の一体性は認めませんでしたが「一定の関係性はあった」と認定。さらに橋爪氏について「インターネットの個人利用者として要求される水準の事実確認は行っていた」として、報道機関による名誉棄損についての従来の判断基準ではなく、インターネットにおける一般市民の行為であることを考慮した新基準を示し、橋爪氏を無罪としました。しかし東京高裁はこの新基準を全否定し、報道機関による名誉棄損の基準と同様の判断によって、逆転有罪。今回の最高裁判決も、二審判決を支持するものでした。

 今回の最高裁判決は、新聞各紙が報じていますが、中でも朝日新聞は17日朝刊の1面トップで報じました。

【asahi.com 2010年03月16日】ネット上の中傷書き込みで名誉棄損罪確定 最高裁初判断

 インターネット上で虚偽の内容で企業を中傷した男性会社員(38)について名誉棄損罪が成立するかどうかが争われた刑事裁判の上告審で、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は男性の罰金刑を確定させる決定をした。15日付。第一小法廷は、ネット上の書き込みなら名誉棄損罪成立の判断が緩やかになるかどうかについて「個人利用者によるネット上の表現行為でも成立判断は緩やかにはならない」とする初判断を示した。

 男性は2002年10~11月、ラーメン店をフランチャイズ展開する企業が「カルト集団」という内容を自分のホームページに書き込んだとして、04年に名誉棄損罪で在宅起訴された。一審・東京地裁判決は、マスコミや専門家がネットを使って情報を発信する場合と比べ、個人利用者が発する情報の信頼性は一般的に低いと指摘。「個人利用者に求められる基準の調査をして書き込んでいれば罪は成立しない」と述べ、従来の同罪の成立に比べ緩やかな基準を示して無罪とした。しかし、二審・東京高裁はこの基準を否定して男性に罰金30万円を宣告。男性側が上告していた。

 今回の決定で第一小法廷は、個人利用者がネットに載せた情報であるからといって、閲覧する側が「信頼性が低い」と受け取るとは限らないと指摘した。

 そのうえで、ネットに載せた情報は不特定多数の利用者が瞬時に閲覧でき、名誉棄損の被害が深刻になる可能性がある▽ネット上の反論によって十分に名誉回復が図られる保証はない――といった事情を考慮。名誉棄損罪が成立しないのは、活字や演説などの表現と同様、内容が正しいと誤って信じたことについて「確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるとき」だけだとする考え方を示した。

 この考え方にたって男性のケースを検討。他のネットの書きこみ、企業の内部関係者のメールなどを真実と信じて企業を批判したことについて「一方的な立場から作成されたに過ぎない資料もある」「被告の理解も不正確」「関係者に事実関係を確認することも一切なかった」などの点を指摘。「罪が成立する」とした二審判決が相当と結論づけて、男性の上告を棄却した。(中井大助)

 この判決に対し、橋爪氏の弁護人を務めた紀藤正樹弁護士は、ブログでこう批判しています。

【弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版 2010年03月17日】不当な最高裁判決に驚き!と困惑!! 本日午前11時47分加筆あり 本日3時40分判決文UP

国家権力が、市民の表現につき、恣意的に、逮捕起訴できることを容認する判決が出ました。

この事件で、中傷という評価は誤っています。
少なくとも、この事件は、市民として「できうる調査」はしていた事案です。

ですから今回の最高裁判決は、本当に驚きです。
たった4頁の判決で、市民に、マスコミと同様の調査義務を課すというのでしょうか?
(略)

 橋爪氏は本紙の取材に対して、こうコメントしています。

「私がサイト上で書いていたことは決して誹謗中傷などではありません。トンデモな主張で朝鮮人を差別したり、学位販売ビジネスや宗教法人売買ビジネスも手がけていた(平和神軍の)黒須氏とグロービートジャパンの関係を示す情報は、ラーメン『花月』のフランチャイズ店オーナーになるかどうかを考えている人の重要な判断材料になると考えて、掲載していました。この事実を知らないままグロービート社に関わってしまい、ひどい目にあうような人が出ないように、という思いでやっていたことです。不本意な判決によって前科者にになってしまいましたが、私は絶望していない。絶望しているヒマはない。こんな判決が出てしまうと、以前開設していたのと同じサイトを再開することはできませんが、7年間、刑事被告人として自分が経験したことを何かの形で残したい。今後も、同様の裁判はきっと起こる。ネットで表現を行う人々のためにも、自分の7年間の軌跡をムダにしないよう、伝えていきたい」

3 コメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして。編集プロダクションのIと申します。
藤倉様にメールをお送りしたいのですが、
このページに設定されているメールフォームを
使っていないため、送信がうまくできません。
このコメント欄が承認制のものであれば
(いきなり公開されず非公開が可能なら)
当方のメールアドレスをお知らせし、そこに藤倉様の
メールアドレスをご連絡いただくという方法で
連絡をとらせていただければと思うのですが、
いかがなものでしょうか。
ご検討いただけますと幸いです。
よろしくお願いします。

藤倉善郎 さんのコメント...

メールアドレスはこちらになります。
daily.cult@gmail.com
よろしくお願いします。

匿名 さんのコメント...

さっそくにありがとうございます。
メールをお送りさせていただきました。
ご検討いただけますと幸いです。
よろしくお願い申し上げます。