「リアルに人変わりますよ」統一協会（統一教会）二世の教化システム【ＳＴＦ】

■特殊任務遂行部隊
　『アダムとイヴの仲を嫉妬したルーシェルがイヴと姦淫し、その結果全人類の血が穢れた』とする統一協会（統一教会）の教義。原罪を失くすには教祖文鮮明がマッチングした相手と祝福（合同結婚式）を受け、教祖の体液が入った聖酒を飲むことが必要とされる。その祝福カップルから生まれた子供は祝福二世と呼ばれ無原罪の神の子として統一協会内では優遇を受ける。










　ＳＴＦ（Special　Task　Force/特殊任務遂行部隊）は、この祝福二世を従順な信者として教化していくため、文鮮明の３男文顕進がＣＡＲＰ（原理研究会）会長だった２００５年頃システム化された。




■教化は小学生から
　教化は二世が小学生になると始まる。小学生のＳＴＦはｉＳＴＦ（小学生原理）と呼ばれ、ｉＳＴＦ生活プログラム、ｉＳＴＦ勉強会、ｉＳＴＦわくわく講座などで一般社会とは異なったカルトの偏った思想体系を教え込む。また、小学生向けの機関誌『ムーンワールド』もある。二世小学生は『子供信仰ハンドブック』を持たされる。下記の教材を参照していただきたい。子供をこのような偏った思考に誘導すること自体が児童虐待に該当すると感じるのは記者だけではない筈だ。


■中高生はＪｒ．ＳＴＦ
　中高生になると、二世はＪｒ．ＳＴＦに入ることを目指す。地区教会の二世部長がｉＳＴＦから選抜した二世に試験を受けさせる。ｉＳＴＦにより教化された二世は、Ｊｒ．ＳＴＦ試験に選抜されることを目標にする。生殺与奪の権力を持つ二世部長は、一定の『チャレンジャー期間』を設け、二世を謙虚にさせるという。
　Ｊｒ．ＳＴＦ選抜試験は年２回夏前と冬に全国規模で実施され、『原理試験』『論述試験』『２０Ｋｍラン（男子２１Ｋｍ走・女子１８Ｋｍ走）』『面接』で知識・体力・信仰心をテストされる。一番重視されるのは『面接』だ。面接では「神様を感じた体験談」などが求められるという。Ｊｒ．ＳＴＦは今年１２月で１２期になる。受験費用は１万円程。一回で受かるケースは殆どなく、合格できるのは受けた人数の２～３割ということである。既成祝福などを受けたとしても両親が入信前に生まれた子供（信仰二世）はまず受からないという。受験者数は増加傾向にある。
　統一協会（統一教会）の狙いは、お金と信仰基準が高い二世を集めることにあるのではないかとの意見もある。

　Ｊｒ．ＳＴＦ自体は教育機関ではなく、合格者は『グリーン修』と呼ばれる修練会に進み、そこで教化されリアルに人が変わるという。グリーン修参加は２回までという制限があり参加費用は７泊８日で７万円。グリーン修では通常の修練会の内容（原理講義・ゴミ拾い・山登りetc…）にプラスして路傍伝道などの前線活動を行う。今年夏に目撃された制服を着た女子高生アンケート勧誘員はこのグリーン修による路傍伝道であったと思われる。　　　　　　　　　統一教会関連団体のデモに参加する二世信者たち
　Ｊｒ．ＳＴＦに受かると通常の修練会の際、班のリーダーになったり、イベントでも係を務めるようになり教会でも皆のまとめ役になるという。
　またＪｒ．ＳＴＦ選抜修練会も定期的に開かれ、フィナーレでは「神様に会えた」と感動の涙を流すそうだ。
　Ｊｒ．ＳＴＦはＳＴＦの準備段階とされ、各段階の修練会やローカルミーティング、イントラと呼ばれるグリーン修に参加したＪｒ．ＳＴＦメンバーだけがログインできるサイト内の心情日誌や生活プログラムシートなどで二世教育を施されてゆく。

　グリーン修に参加した経験を持つ二世は語る

「選抜された人は信仰基準が高くテンションも高い。そしてすぐ感動して泣く。そういうメンバーで踊ったり騒いだりしていると皆異様なテンションに飲み込まれていきます。そうしているうちに仲間意識が生まれ団結力が強まるわけです。純粋に楽しいと思ってしまうし仲間がいて心強い。そういうメンバーで前線活動をして、一緒に試練を乗り越え喜びを分かち合うという体験をさせます。そんな体験の中で、嬉しいことがあったりすると誰かしらが『神様だ！』と言います。一人が言うとそう思ってしまうもので皆『神様だ！』と言うようになります。『神様を感じられた！』これが更なる信仰と励みになってしまうわけです、『自分は神様のためにもっと頑張らないと！』って。メンバーがメンバーだけに教会側がキッカケを作るだけで、マインドコントロールの波に自動的に呑み込まれてしまっている感じがしますね」

■グリーン修　⇒　ピンク修　⇒　ホワイト修
　更に、夏休みや春休みに１週間から１０日間行われるグリーン修練会に２度出席し、教区教会に二世部長（教育担当者）の推薦を受けた者だけが年２回実施される体力意思テストを受け国際修練会である『ピンク修』に進むことができる。
　ピンク修はモンゴル・フィリピン・ベトナム・韓国へ１ヶ月合宿に行き英語漬けの生活を送りワークショップを行う。
　ピンク修の次の段階はホワイト修。他にＪｒ．ＳＴＦを対象とした修練会には学習修やシャープ修がある。

■そしてエリートはＳＴＦへ
　エリート二世は高校を卒業すると、選抜試験を受けＳＴＦに進むことになる。ＳＴＦでは一般の会社でいう営業活動に該当するものとして２年間、伝道・物販（万物復帰）・ボランティア活動などを行う。そして様々な信仰訓練や修練会・セミナーを経て各地の大学でＣＡＲＰに所属し基準の高いエリート食口（統一教会信者）になっていく。（公式７年路程→ＳＴＦ２年、ＣＡＲＰ４年、海外宣教１年）。

　現在のところＳＴＦラインに達した二世は全国で１００名程度、求められる基準を満たした人数としては少ないように思えるが、ＳＴＦは二世全体の底上げを図るよりは突出したエリート人員を育て輩出することを目指している。そのエリートを見て「自分もああ成りたい！」と目指す二世を増やし結果として底上げを図るという意図があるようだ。

■ＣＡＲＰとの関係
　従来のＣＡＲＰ内に於いては、ＣＡＲＰを通して二世教育をするという狙いから二世はＣＡＲＰに所属させられていた。しかし親から原理教育を施されていない二世信者と大学に入ってから勧誘され入信しＣＡＲＰに所属になった学生との対立構造が生まれるケースが多々あったという。そこで文顕進ＣＡＲＰ会長は、ＣＡＲＰの中で二世がお荷物にならないようにとＳＴＦで２年間成立過程をさせた後、エリート二世信者をＣＡＲＰ内でも指導的立場に立たせようとした。
　当初一世である親は子供を大学に行かせないで２年間教育をするＳＴＦは学業に支障が出るとして反対していたという。親の世代は入信すると大学を退学するケースが多かった。自分の子供は大学に行かせたいと思ったのであろう。

■二世教育の必要性から
　多くの祝福家庭では伝道と献金に追われ、家庭内での二世教育が疎かになっていたという。統一協会（統一教会）を離れる二世も多かった。そこで普段の生活スタイルの中で如何に信仰を成長させていくかという側面からもＳＴＦのシステムが確立されていったようだ。

■ＳＴＦの現在
　現在のＳＴＦは当初の『エリート＆トップリーダー幹部候補養成』という目標から一段下がり、地区地域の教育担当者になれるという所謂『現場のリーダー』の養成レベルに落ち着いているようだ。現に、今ではＪｒ．ＳＴＦの卒業生でなくとも希望すればＳＴＦ選抜試験を受けることができるようになっている。
　以前は欧州・南米・豪州・韓国などで年に一度ＳＴＦの世界総会（国際ＳＴＦ総会）が開かれていたが、今は日本のみの開催である。

■二世信者が抱える課題
　ｉＳＴＦ～Ｊｒ．ＳＴＦ～ＳＴＦの流れをみると、二世もまた、選民思想の中で競争意識を掻き立てられ、マインドコントロールされていると云える。
　祝福二世は、自らの出目・出生からアイデンティティの確立に困難を来たすケースがあり、親や団体に不信感を持ったとしてもカルトから抜け出ることが困難な状況にある。二世に施されるマインドコントロールの呪縛から逃れたとしても親や団体からの離脱には尚一層の困難が待ち受けている。そんな二世を親のハラスメントから庇護し、ケアしながら自立支援する体制作りが望まれている。