浄土真宗親鸞会(本部・富山県)のダミーサークルが、「国立立山青少年自然の家」で合宿を行うことになっていた問題で、合宿前日になってダミーサークル側が施設利用をキャンセルしたことがわかりました。
親鸞会は、大学生に対して正体を隠した勧誘を行ったり、信者に対して多額の金銭の支払いを求めるといった点から、全国の大学で問題視されているカルト的宗教団体です。本紙既報の通り、この親鸞会の学生組織である「学友部」のメンバーたちが、「T(仮名)」というサークル名称で、5月1~3日の3日間、「国立立山青少年自然の家」で合宿を行う予定でいました。
本紙がこの件を報じたのは合宿前日でしたが、記事掲載後、立山青少年自然の家に対して“T”の代表者から連絡が入り、施設利用のキャンセルを伝えてきたとのことです。立山青少年自然の家の担当者によると、“T”側が語っていたキャンセルの理由は、「カルトであるとかそういうことはないが、(記事が掲載されたことで)ほかの施設利用者に迷惑をかけては申し訳ないので」というものだっとのことです。
本紙は親鸞会本部に電話で事実確認を試みましたが、連休中は広報担当者が不在であるとの理由で取材はできませんでした。
親鸞会脱会者によると、親鸞会のダミーサークルがゴールデンウィークに開催する合宿は、正体を隠して勧誘した新入生に対し親鸞会の教学を教え込み、代表である高森顕徹氏の名を出すなど、勧誘の仕上げにあたる重要な意味を持っています。
「今回の立山青少年自然の家での合宿が中止になっても、彼らは合宿場所を部室(活動拠点としているアパートの一室など)に切り替えるなどして、合宿そのものは行うでしょう。しかし安価に使用できる国などの公共の施設がこういう合宿に使われる事態は、何とかしてほしい。近年、親鸞会は公共施設を利用する場面が増えてきており、同様のケースは立山青少年自然の家に限った話ではない」(「浄土真宗親鸞会被害家族の会」関係者)
利用者を受け入れる施設側にも悩みはあります。
「これまで、キリスト教のグループが親子で自然体験をするというケースでも利用を認めてきています。たとえば施設内で非常識な内容のセミナーをやるとか、他の利用者に対してアピール活動をするなどの具体的な問題行動を確認した場合は別ですが、宗教団体であるという理由だけで利用を拒否することはできません」(立山青少年自然の家の担当者)
そもそも、利用団体の日ごろの活動実態まで施設側が調査するのは不可能です。今回のケースでも、施設側に何か重大な不手際があったとは言えません。事前にわからなかったことは仕方がないので、問題は、そういった事実がわかった後の対応だろうと思います。今回の立山のケースでは、親鸞会側が自ら利用申請を取り下げたため、施設側の対応は大きな問題にはなりませんでした。しかし過去の類似の事例では、施設側の無策が親鸞会の活動を放置してきているという背景があります。
「過去、親鸞会が利用している地方公共団体の施設に対して問題を指摘したことがありましたが、何も対応してくれなかった」(「浄土真宗親鸞会被害家族の会」関係者)
前回の記事でも紹介したように、国立青少年教育振興機構および立山青少年自然の家は、「特定の政党や宗教を支持」する団体の利用を禁じています。ましてや、学生を騙して勧誘し、入信させた後は多額の金銭を支払わせる(学生でも献金などで年間100万円以上の出費は珍しくありません)ような団体は、そもそも「青少年育成」という施設の趣旨に反しています。地方公共団体が運営する「自然の家」等の施設においても同様です。
カルト的団体が公共の施設を利用するケースは、親鸞会に限らず、ほかの団体においても起こりえます。「宗教団体であるという理由で拒否はできない」というのは、お役所的にはその通りかもしれません。しかしカルトの問題はそもそも「宗教であるかどうか」ではありません。「税金を使ってカルト団体の活動を支援する」ことの問題性も、しっかり自覚していただきたいものです。
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