幸福の科学が週刊朝日編集長と記者を名指しで霊言を出版

　8月19日、幸福の科学出版から『現代の法難④　朝日ジャーナリズムの「守護神」に迫る』が発刊されました。『「週刊新潮」に巣食う悪魔の研究』に続いて、霊言を用いてメディアをこき下ろす内容ですが、『朝日ジャーナリズムの「守護神」に迫る』ではなんと、週刊朝日の編集長と記者の実名を挙げて、その「守護霊」に喋らせるというぶっ飛びぶりです。

■たった1ページの記事で

　『「週刊新潮」に巣食う悪魔の研究』では、かつて“『週刊新潮』の天皇”と言われた名物編集者・斎藤十一氏の霊を、“「週刊新潮」に巣食う悪魔”として降臨させ、あれこれ喋らせています。こうなった背景には、週刊新潮が大川隆法総裁の妻・きょう子氏へのインタビューに基づいて幸福の科学の内部事情や大川隆法総裁の生活ぶりをたっぷり書き立てたという経緯があります。だからって霊言と称して、特定のメディアを悪魔の手先呼ばわりする本を出版するというのもぶっ飛んだ話ですが、週刊新潮の一連の報道は、幸福の科学がブチキレたくなるくらいの内容とボリュームがあったことは確かです（大川きょう子氏、文春・新潮で大川隆法総裁の私生活を暴露！参照）。

　が、今回出版された『朝日ジャーナリズムの「守護神」に迫る』の原因となった記事は、週刊新潮ほどインパクトのあるものではありませんでした（面白かったけど）。週刊朝日8月5日号に掲載された＜独占インタビュー　被災地住み込み私財１億円!?投入　大川隆法夫人がトイレ掃除していた＞という、１ページにも満たないものです。大川総裁と現在離婚裁判などで係争中の妻・きょう子氏が現在、東日本大震災の被災地で私財をなげうったボランティア活動をしている、という内容で、とくだん幸福の科学や大川総裁への批判が書かれているわけではありません。

　週刊朝日は7月8日号でも、＜不可解　幸福の科学が披露した珍説「〝バルタン星人〟は信者です」＞という、これまた1ページにも満たない記事を掲載しています。これも今回の霊言本で減給はされている記事ですが、「幸福の科学がこういう霊言をやってます。どういうことなのかというと」という話を、教団の広報担当者のコメントなどを交えてリポートしているだけ。とくだん批判したりバカにしたりする記事ではありませんでした。

■悪魔って、その程度？

　その程度の記事に物申すために出版された『朝日ジャーナリズムの「守護神」に迫る』。いったいどんな内容なのかというと──。

　まず最初に呼び出されたのは、悪魔ベルゼベフ（霊）。

【現代の法難④ 朝日ジャーナリズムの「守護神」に迫る

里村（英一・広報局長＝実物）　ただ、「週刊朝日」そのものは、新聞に比べればずっと小さいですよね。

ベルゼベフ（霊）　おまえ、バカだなあ、相変わらず。「週刊朝日」は入り口なんだよ。

里村（実物）　ほう。

司会（実物）　朝日新聞が本丸？

ベ（霊）　当たり前だろう。マスコミを牛耳りゃあ、いまの日本はみんな信じちゃうよ。

司会　朝日新聞、テレビ朝日ぐらいを狙いたいと？

ベ（霊）　ああ。あと、今は反原発ムードで、みんな恐怖心があるだろ？

大川隆法（実物）　朝日の社会面か何かで、「いまも被災民を救い続ける大川きょう子氏」という記事を、写真入りで、デカデカと載せたいんだね。

ベ（霊）　そうだよ。

司会（実物）　さすがですね。ルシフェル以上ですねえ。

大川隆法（実物）　頭がいいねえ。

※発言者のカッコ表記は、本紙。

　マスコミを使わないと人心を動かせない悪魔って、あんまり怖くないですね。いまいち頭のいい会話には見えません。

　司会から「あなたは、朝日の誰とお付き合いがあるのですか」と問われたベルゼベフ（霊）は、「ああ？　朝日の社長だよ」と答えていました。週刊朝日に1ページにも満たない記事が載っただけで、朝日新聞社の社長まで悪魔の仲間呼ばわりです。幸福の科学は、かつて朝日新聞社前社長の箱島信一氏を「霊言」で誹謗中傷したことがありますが、そのうち現社長（霊）もいじるつもりなのでしょうか。

■記者の霊も降臨したけど……

　次に降りてきたのは、きょう子氏のボランティア活動をリポートする記事を書いた、週刊朝日・藤田知也記者（霊）です。これまで幸福の科学は、朝日新聞社前社長の箱島信一氏や、週刊新潮のかつての名物編集者・斎藤十一氏（個人）の霊を呼びだしたりはしてきました。しかし記者個人の霊を呼び出して槍玉に挙げるのは、極めて異例です。

　ただし、きょう子氏の記事に関する藤田記者（霊）の話には、ほとんど内容がありませんでした。幸福の科学の霊言では、「霊の存在を信じていない人物」の場合、霊を呼び出しても状況を理解できず「ここはどこ？」「あんた誰？」みたいなことを口走ることが往々にしてあります。藤田記者（霊）も同様で、そんなたるいやり取りが冒頭でぐだぐだと続きます。

　本題であるはずの、記事を載せた経緯については、あまり具体的なことは書かれていません。藤田記者（霊）は、「あの週刊新潮が儲けそこねたところから、上前はねられたら面白いじゃねえか」とか、抽象的な悪態をついているだけです。あまり面白くないので引用しません。

■もはやきょう子氏と関係ない話題に

　週刊朝日・河畠大四編集長（霊）も登場しています。が、きょう子氏の記事に関する話はほとんどなし。原発がどうの、増税がどうの、菅政権がどうのといった話のほか、「幸福の科学は怖い」「日本の最高権力者は朝日新聞の社長」などと口走って、そういう諸々から幸福の科学を批判してるんだというような雰囲気をかもしている程度。きょう子氏の件とはもはや無関係に、（飽くまでも幸福の科学視点での）朝日新聞の思想や背景を云々する内容です。

　そして、朝日新聞の守護霊は丸山眞男らしいという話になり、河畠編集長（霊）を帰した後、大川隆法総裁が「河畠編集長に、幸福の科学を批判する記事を書かせようとしてインスピレーションを降ろしている者よ。どうぞ出てきなさい」と呼びかけます。すると、降りてきたのは憲法学者東京・宮沢俊義（故人）の霊。「憲法改正を主張する幸福の科学を潰したい」的なことを口走っていました。

■「東スポの抗弁」は幸福の科学にも通用するのか

週刊朝日8月5日号より

　しかし、ちょっと待ってください。そもそも週刊朝日は、幸福の科学を批判する記事なんか載せていません。きょう子氏のボランティア活動を誌面でリポートしただけです。それを幸福の科学が快く思っていないというだけなのに、編集長や記者は勝手に自分の霊を降ろされて名指しでいじられ、朝日新聞社は社長が悪魔とつるんでいるかのように言われ、さらに「幸福の科学を潰すため」だと言っているかのように扱われ、書籍として出版までされてしまいました。

　幸福の科学が「朝日」と名のつくものが嫌いなんだということはわかりますが、批判されたわけでもないのにここまでやるというのは、理解に苦しみます。しかも内容にあまりに具体性がなくテーマも散漫であるため、この本が河畠編集長や藤田記者に対する名誉毀損になりうるのかどうか、よくわかりません。我が国には「東スポの抗弁」と呼ばれる論理もあります（わからない人はググってね）。いろんな意味で微妙な本です。

　本紙主筆・藤倉の談話です。

「週刊朝日の河畠編集長や藤田記者がうらやましい。やや日刊カルト新聞の方が、週刊朝日よりもよっぽど幸福の科学を批判しているし、幸福の科学が快く思わないであろう記事も多く載せているのに、まだ藤倉の霊は降ろしてもらえていない。幸福の科学は、記事の内容ではなく相手のネームバリューで選んで霊を降ろしているのではないか。納得がいかない」