尾行・通報・恫喝、幸福の科学学園報道の裏バトル

本日11月15日発売の『週刊新潮』同21日号が、幸福の科学学園（栃木県那須町）の実態を報じています。記事の執筆者である本紙主筆・藤倉は、取材中、幸福の科学学園の職員に尾行されたり、宗教法人の職員から「痴漢かもしれないと警察に連絡しといたから、取材をやめるように」と恫喝されたり。一方、藤倉は学園に対して「虚偽通報だ！」と抗議。『週刊新潮』での報道の裏側では、教団側と激しい攻防が繰り広げられていました。

■幸福の科学学園の教育実態がついに明らかに

『週刊新潮』11月22日号掲載の記事〈特別読物　文科省も県もお手上げ！　子供に嘘を刷り込むデタラメ授業！　「坂本龍馬の前世は劉備」と教える「幸福の科学」学園の罪〉は、藤倉が幸福の科学学園の複数の関係者への取材をもとに執筆したもので、おおまかに以下のような内容です。

幸福の科学学園の教員が歴史の授業で「坂本龍馬は劉備玄徳の生まれ変わり」などと教えていたり、ニーチェが登場する国語の評論文を「悪魔の名前が登場するからやりません」として飛ばしてしまうといったオカルト授業が行われている。大川隆法総裁を個人崇拝する宗教教育や、幸福実現党を支持する、教育基本法違反の政治教育が行われている。事実上、学園内での生徒間の恋愛が禁止されている。ルール違反などを犯した生徒に対して “独房懲罰”が繰り返し行われている。このような学校に栃木県は、開校初年度と翌年度に計約1億2000万円を補助金として支出し、今年度だけでも1億円を超える見込みである。

記事を書くにあたって藤倉は、学校法人幸福の科学学園に対しても事実確認を求めました。しかし学校法人は回答せず、代わりに宗教法人幸福の科学の職員が「幸福の科学グループ広報局」として回答。その中で教団側は、“独房懲罰”等の言葉は用いずソフトな言い回しながら、大筋の事実関係を認める趣旨の回答をしています。

■「不審者」を一日中放置する学園職員

今回、藤倉は取材の一貫として10月21日、栃木県那須塩原市の映画館を訪れ、当時公開中だった幸福の科学の映画『神秘の法』のためにバス2台で乗り付けてきていた学園の生徒たちに声をかけて回りました。

一日中、映画館があるショッピングモール内をうろつき、生徒たちに話を聞いたのですが、途中から引率の学園職員がそれに気づき、ショッピングモール内で常に藤倉を尾行するようになりました。

後に学園側は「生徒が怖がっていた」「近くで痴漢事件があったから心配だった」などという理由で警察に通報するのですが、それは藤倉との尾行合戦が終了した夜8時半以降のこと。ショッピングモールでは、1日中うろついている藤倉に身分確認をするでもなく注意するでもなく警察を呼ぶでもなく、ただ背後をつけまわしていただけ。藤倉は極力、職員らの目を盗んで生徒に話を聞いていましたが、職員に見られていたケースもないはずはないと思うのですが。「痴漢かもしれない」不審者を止めもせず生徒への接触を許してしまっていて、いいのでしょうか。

最終的には、辺りが暗くなってからバスに乗り込むために待っていた生徒たちに藤倉がまとめて声をかけようとした際、学園職員から「報道関係の方ですか？」と問われ、「そうです」と答えて名刺を差し出しましたが、受け取ってもらえませんでした。

職員「取材はグループ広報にお願いします」

藤倉「グループ広報って、宗教法人の総合本部にある広報ですか」

職員「そうです」

藤倉「名刺は受け取らなくていいんですか？　こうやって近づいてきた人間が何者なのか把握しておかなくていいんですか？」

職員「いいです」

なぜか知りませんが学園職員は、「痴漢かもしれない」不審者の身分を、一生懸命、確認しないように努めていました。

■夜の農道でカーチェイス

午後7時頃、藤倉は取材を終えて自動車でショッピングモールを後にしました。家族に那須土産を買うため、黒磯駅へ向かいます。ところが、どうも後をつけてきているように思える車がいます。

ケーキを買い終わるのを待っていてくれたアリオン

わざと極細な裏道に入ってみたりしましたが、ぴったりついてきます。お菓子屋さんに立ち寄って土産を選んでいる間も、藤倉の車が見える位置に停車してずっと待っています。香川ナンバーの赤いアリオン（トヨタ）です。運転席に女性、助手席に男性の姿が見えます。藤倉はプリンとチーズケーキとラズベリーケーキを買いました。

空き地に入ってUターンすると見せかけて、元と同じ方向に行ってみたりして遊んでも、律儀についてきます。諦めて出発したと見せかけて、すぐコンビニの駐車場に入って、トイレを借り缶コーヒーを買い、車に戻ってタバコをふかし、だらだらしてみました。アリオンからは、誰も降りて来ません。コンビニで買い物もしないのに駐車場の一角を占拠しています。ひどいアリオンです。

しかし藤倉が「また引っ張り回してやろっかな～」と思いながらエンジン・スイッチに手をかけたとき、アリオンが先にエンジンをかけました。駐車場から出ていきます。もう諦めちゃうんでしょうか。ってか、結局、本当にコンビニで何も買わないつもりです。

藤倉は、アリオンの正体を確認すべく、後ろにくっついて走り出しました。逆尾行の始まりです。助手席の男性が、こちらのに気づいてチラチラ後ろを見ています。やがて先ほど藤倉が取材していたショッピングモールに戻って、駐車場に停車しました。そのまま誰も車から降りてきません。もう学園のバスもないし、子どもたちもいません。

「こんなところで持久戦をしてもしょうがないから帰ろっかな～」と車を発進させた藤倉は、駐車場の出口に向か……わずにアリオンの真正面に車を回し、運転席と助手席を一眼レフで激写。後で教団関係者に確認したら、やはり学園の職員でした。

写真を撮られたことに気づいた職員たちは、すごい勢いで車を発信させて逃げていきました。ずいぶん大回りをしながら幸福の科学学園の方に向かっていきます。真っ暗な農道を約1時間、追いかけっこ。学園まで5～6kmという辺りで、こちらが信号で引っかかってしまいました。本能でつい追いかけてしまっていた藤倉は、「よく考えたら顔写真撮れたんだから、それを後で学園関係者に見せれば素性の確認できるじゃん」と気が付き、そのまま帰路につきました。

逆尾行を終えたのは夜8時半ごろ。後に教団広報がこちらからの質問書に答えた回答書の中で白状したのですが、彼らが警察に通報したのは、この逆尾行終了後です。

写真撮られたぞ、逃げろや逃げろ！

■教団広報「痴漢かもしれないと通報しといた」、主筆妻も激怒

2日後、幸福の科学の教団広報から電話がありました。

広報「日曜日に那須の映画館に行きましたか？」

藤倉「はい」

広報「学園から、藤倉さんらしき人が生徒に声をかけていたと聞きました。声をかけられた生徒が怖がっていました。学園関係者への取材はやめてください」

藤倉「怖がらせないように配慮しますが、取材しないという約束はできません。学園の外で誰が誰と話そうが自由です。こちらにしても、生徒にしても」

広報「しかし生徒が怖がっているので、学園では警察に連絡したんですよ」

藤倉「へえ、そうですか。そのわりには、一日中映画館にいたのに警察なんか来ませんでしたよ」

広報「藤倉さんが帰った後に連絡したんです」

藤倉「ということは、ぼくが学園関係者に報道だと言って名刺を渡そうとしたのに受け取りを拒否された後ですね。警察に通報するのに、こちらの身元を確かめようともしなかったんですか」

このやりとりで広報担当者は、「藤倉が取材者であると知った上で通報した」ことを自白してしまっています。

広報「その日、近くで痴漢騒ぎがあり、みな怖がっていたんです」

藤倉「報道を名乗って名刺を手渡そうとする痴漢はいませんわなあ」

広報「そんなことわかりません。学園では、痴漢かもしれないと警察に報告しましたから」

「藤倉が取材者であると知った後で通報した」はずなのに、「痴漢かもしれない」と虚偽の通報をしたと、これまた広報担当者が自分から白状してしまいました。

藤倉「はあ？それ嘘じゃないですか。警察に嘘の通報したんですね。それでぼくが逮捕されるようなことがあれば、ぼくはあなた方を虚偽告訴罪で訴えますよ」

広報「でも、近くで痴漢騒ぎが……」

藤倉「その痴漢は、報道を名乗って名刺を手渡そうとしながら痴漢してたんですか？」

広報「いえ、違いますが……、だから痴漢“かもしれない”と」

言うまでもありませんが、藤倉自身も、報道を名乗って名刺を差し出しながら生徒や職員にエロいことを口走ったり体を触ろうとしたり妙なものを露出させたりといったことはしていません。

藤倉「“かもしれない”という根拠すらないじゃないですか。メディアの取材だとわかっていながら、痴漢かもしれないと嘘をついて警察を動かそうとするのが、学園のやり方ですか。完全な嫌がらせじゃないですか。こちらはそんなことで怯まないですけどね。警察来たところで、やましいことは何もしてないんだから、普通に名乗って事情を説明するだけですよ」

広報「いや、だから怖かったんで」

藤倉「断られたらすぐ引き下がって、しつこくもしてないのに。あなた（教団広報）、その場にいなかったでしょ。事情を知らない人の言い訳聞かされてもしょうがない。学園の人に伝えてください。警察に虚偽の通報をしたことについて抗議します、文句があるなら、事情を知らない人間なんか挟まずに学園が直接ぼくに言いに来てください、と。ぼくはいま、学校法人を取材しているのであって、宗教法人の取材をしているのではない」

取材をやめろと抗議してきたはずの教団職員が、逆に藤倉から抗議されています。幸福の科学には「墓穴を掘る修行」でもあるのでしょうか。

広報「藤倉さんの言い分はわかりました。とにかく生徒への取材は……」

藤倉「気をつけます。取材しないという約束はできません」

広報「……」

メディアの取材を迷惑だと感じた人が警察に通報することは、何も悪いことではありません。学園の生徒の安全を守る立場にある学園職員が通報するのも、当然のことです。取材する側に行き過ぎがあれば、警察から注意を受けることもありますし、法を犯していれば逮捕されることもあります。「痴漢かもしれない」などとウソをついて通報しなければならない必然性はどこにもありません。不必要に度を越した対応をしたことをわざわざ藤倉に伝えることによって取材をやめさせようとするのは、明らかな恫喝です。

藤倉に周囲をうろちょろされた上に、抗議したつもりが逆に怒鳴りつけられ、教団の人もさぞかしムカついたことでしょう。しかし実は、藤倉に対する妻の怒りは、それ以上のものでした。那須取材から戻ってきた藤倉に、妻は土産のチーズケーキとラズベリーケーキをほおばりながら、こう毒づきました。

「カーチェイスとか、そんなおもろい取材に、なんで私を連れて行かなかったんだ！　いいなあ、自分ばっかり！」

だって、そんなことになるなんて予想してなかったんだもん。

取材量は多ければ多いほどいいので、次の日曜日、妻を伴って再び那須へ。今度は警察も来ていたり、ショッピングモール内での職員による尾行が3人くらいに増えていたりしましたが、妻のアシストでなかなかいい取材ができました。長いので詳細は省きます。

今回は、こちら側に女性が一緒だったせいか、生徒たちはバスからこちらの車に手を振ってくれたり、ショッピングモール内でついてきたり、こちらと目をあわせてはしゃいでみせたり。実に子供らしい楽しい反応で、少しほっとしました。

■錯乱する教団広報「虚偽通報じゃなくて虚偽通報だ」

その後、週刊新潮での記事を仕上げるため、藤倉は、幸福の科学学園に対してA4サイズで3ページ、合計33項目の質問を送りました。これに宗教法人職員が「グループ広報」として回答してきました。1週間もの回答期限を設定したのに、教団側は期限前日になって「間に合わない。期限を延ばしてくれ」と言い出したり、期限の午後5時を過ぎてから「回答書を渡したいから夜7時に総合本部に来れないか」と言い出すなどして、ギリギリになってからこちらを振り回します。

すったもんだしながら出てきた回答も、質問に対して全く答えていない部分が多いものでした。そこで同じ内容の再質問を含め18項目の質問を藤倉は再度提出。これに対しても教団は、回答期限の当日になって「間に合わない。期限を延ばしてくれ」と言い出し、翌日に回答が来ました。

一連の質問書の中には、「虚偽通報」の理由を尋ねる質問もありました。教団側からの１度目の回答は、とてもおもしろい内容でした。

【回答書 2012年11月07日】
（略）
（2） 生徒に取材中の藤倉が学園関係者に対して報道関係者による取材であると告げた上、名刺を渡そうとしたにもかかわらず、警察に対して「痴漢かもしれない」などと通報をした事実を、宗教法人幸福の科学広報局の職員・○○○様から告げられました。警察に虚偽の通報を行った理由をお教えください。

警察に虚偽の通報などしておりません。「当日、他の生徒が別件で痴漢に合った事実があったこともあり、映画館で生徒に直接声をかけている人物について、非常に心配している」、という趣旨のことを伝えたものです。（略）

この回答書を手渡してきた際、宗教法人幸福の科学広報局の職員・○○○氏本人から藤倉に対して、口頭で「痴漢かもしれないと通報したわけではない。申し訳ない」と謝罪がありましたが、なぜ事実と違うことを口走ったのかについての説明はありませんでした。

しかし、その際に手渡された回答書でも依然として、学園職員による通報は「痴漢」の可能性にだけ言及し「報道」の可能性について一言も提示していなかったとする内容になっています。これでは、「私たちは虚偽通報なんかしていません。ただ、虚偽通報しただけです」と言っているのと同じです。

意味がわかりません。

■回答変更。でも「変更してない」

藤倉はその点を口頭で指摘した上で、再質問書でこの点について再回答は要求せず、「回答の変更があるようでしたら、承ります。ただし、回答を変更する場合は、変更理由をお教えください」としました。それに対する教団広報の回答は、こんな内容。

【回答書(2) 2012年11月10日】

警察に虚偽の通報などしておりません。前回の回答では、警察へ伝えた内容の主旨を回答しましたが、これまでのやりとりの中で、藤倉氏と当グループの間に誤解が無いようにしたいので、以下の通り、警察に通報した部分について、詳細にお伝え致します。
（略）

この後、延々と「通報」までの経緯が書かれており、今度は、藤倉が報道を名乗った事実についても名刺を差し出していた事実についても、学園職員は警察に伝えたという内容に変わっていました。しかし、説明内容が変更された理由につては一切書かれていません。

しかも、この時の回答書で明らかになったのですが、学園職員が香川ナンバーの赤いアリオンで藤倉を尾行した理由は、〈その後、引き続き学園生へ不当な取材をされないかどうかを確認するため〉（回答書より）だったことがわかりました。そして警察に通報したのは、藤倉による逆尾行を受けた後。つまり学園は、警察に通報した段階ではすでに「不当な取材をされないかどうかを確認するため」に尾行をするほど、藤倉が報道関係者であることを確信していたわけです。

宗教法人幸福の科学広報局の職員・○○○氏本人に電話で聞いてみました。

藤倉「こちらが報道を名乗り名刺を出した事実を警察に告げていなかったという内容の回答が、実は伝えていたという回答に変わっています。しかし回答変更の理由が書かれていません。理由を教えて下さい」

広報「回答を変更したわけではありません。前回は趣旨だけお伝えしていたので、より詳細に書かせていただきました」

藤倉「趣旨というのは、最も主要な内容のことです。こちらは、報道を名乗った事実を学園職員が警察に伝えず痴漢の可能性のみを通報した理由を尋ねました。それへの回答の最も主要な内容が、依然として、痴漢の可能性のみを警察に伝えたというものだった。今回とは回答では明らかに趣旨が変わっています。前回の回答は間違いだった、あるいは不十分だったということですか」

広報「そういうつもりではなくて……」

藤倉「“つもり”とか知りませんから。あなたの心の中は、ぼくには見えません。実際に出てきた文章の内容が変わっていることについて聞いているんです」

広報「こちらで言葉の行き違いとかもあったかもしれないので……」

藤倉「そちらの内輪での“行き違い”など、こちらは知りません。広報の名で書面回答してきた以上、これが教団として公式回答ですよね。前回の回答を変更するとか撤回するとかではなく、前回の回答も今回の回答も両方有効だと考えていいんですか」

広報「……はい」

教団側の主張の変化をまとめると、こうなります。

(1) 虚偽通報しときました。取材をやめてください。（広報局職員からの電話）
(2) 虚偽通報したというのは間違いです、ごめんなさい。（広報局職員からの面談での説明）
(3) 虚偽通報なんかしていません。虚偽通報しただけです。（回答書１）
(4) 虚偽通報ではありません。事実を全て警察に伝えました。（回答書２）
(5) 回答を変更してはいません。(3)も(4)も公式回答です。（藤倉から広報局職員への電話）

これは何次元世界の話なのでしょうか。

■悪意はなくともカルトはカルト

幸福の科学広報局のコメントは、質問への答えになっていなかったり、後で内容が変わったり、変更しておきながら「変更していない」と言い張ったり。何がウソで何が本当なのかどころか、何が彼らの主張なのかすらわからない状態にあります。

これが悪意によるものなのか、職員の無能さゆえの結果なのか、どちらなのかはわかりません。いずれにせよ、結果として出てくる実際の行動が反社会的であればカルトでしょう。今回の場合、結果として出てきた幸福の科学の実際の行動は、「虚偽通報したと藤倉に告げることで取材をやめさせようとして脅してみたが逆にキレられたので、説明をあれこれ変えるうちに異次元に迷い込んでしまった」というものです。

幸福の科学は、カルト呼ばわりされたくないのであれば、メディア批判をしたり「信仰」を振りかざしたりするより前に、自らのカルト的な行動を改めるべきでしょう。このような団体が開校した、人里離れた全寮制学校の生徒達の将来が心配です。

なお、『週刊新潮』に掲載されている記事にある主要な事実関係については、取材の段階で教団側も概ね事実であることを認める回答をしています。記事の内容と教団の主張との違いは、その事実を「問題だ」と考えるのか「問題ない」と考えるのかという評価の部分です。

しかし、この「虚偽通報」めぐる教団側の支離滅裂さを見ていると、『週刊新潮』の記事についても、藤倉が指摘した事実関係を認める回答をしたはずの幸福の科学が「記事は事実無根だ」などと言い出したとしても、不思議ではありません。今後の教団の対応が注目されます。