大学ミスコン企画に宗教団体が出場＝フジテレビ“お台場みんなの夢大陸”

「MISS／MR COLLECTION 2017 in お台場みんなの夢大陸」のステージに立つHSU生

東京・台場で開催中のフジテレビのイベントの一環として8月20日、「MISS／MR COLLECTION 2017 in お台場みんなの夢大陸」が開催されました。「全国の大学で開催されているミス・ミスターコンテスト」の出場者を集めたと銘打った企画でしたが、これに大学ではなく宗教法人幸福の科学の信者養成施設である「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」所属の若者7人が参加。まるで大学であるかのような扱いで紹介されてステージに立ちました。


■大学じゃない「ユニバーシティ」

ステージ前は大盛況

「MISS／MR COLLECTION 2017 in お台場みんなの夢大陸」は、フジテレビ主催のイベント「お台場みんなの夢大陸」内のいち企画として、フジテレビ社屋前の屋外ステージで行われたもの。別会社が運営する「MISS COLLE」「MR COLLE」に登録された全国の「大学」のミス・ミスターキャンパスを登壇させ、MVPなどを選び表彰しました。

当日、数百人はいようかという人だかりを前に、司会のフジテレビ・安宅晃樹アナウンサーがイベントの趣旨をこう説明しました。

「全国の大学で行われているミス・ミスターコンテスト。その中か東京都内を中心に行われている26大学39のコンテストの皆さんに集まっていただきました」

出演者の数は約260人。最終的には東京大学・大野南香さんと桜美林大学・仲山大明さんがMVPに輝きました。

しかし、出演者たちが大学ごとに紹介され次々とステージに上がる中で、こんな一幕が。

「続きまして、ミス・ハッピー・サイエンス・ユニバーシティーのファイナリストの方々です」（安宅アナ）

4人の女性がステージに立ち、続いて「ミスター・ハッピー・サイエンス・ユニバーシティー」として3人の男性が。

宗教系大学の出場はあったが、大学ではない宗教団体はHSUのみ

しかし本紙でも繰り返し報じてきた通り、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティー（HSU）は大学ではありません。宗教法人幸福の科学が運営する信者養成施設。つまり宗教団体そのものです。

出場大学の中には青山学院大学、学習院大学、國學院大学、駒澤大学、上智大学、明治学院大学、立教大学といった宗教系大学もありましたが、宗教団体はHSUのみ。主催者側からは特に「大学ではない」等の説明もなく、ほかの大学同様「大学」であるかのように扱われていました。

■HSUの運営は宗教法人

ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ（千葉県長生村）

HSUが開設されたのは2015年春。当初は学校法人幸福の科学学園が運営する「幸福の科学大学」としての開設を予定していましたが、前年に当時の文部科学大臣・下村博文氏が同大学の設置を不認可と決定しました。文科省は、認可申請の過程で学校法人の木村智重理事長から文部科学省担当者に対して、「宗教法人の連中は過激な奴が多く、それを私が抑えている」といった趣旨の発言があったなどとして、同大学を5年間は認可しないとペナルティも課しました。

学校法人ではなく「幸福の科学」が運営する宗教施設であることを表明するハッピー・サイエンス・ユニバーシティーのウェブサイト

その結果、学校法人が大学のために建設した施設を利用して、宗教法人幸福の科学が開設したのが、HSUです。

HSUは予備校などのような「各種学校」としての認可も得ていません。「大学」や「学校」等を名乗ることが学校教育法で禁じられており、「入学」や「卒業」をしても学歴にはなりません。

HSUが開設された2015年には、幸福の科学学園那須校（高校）の卒業生100人のうち約8割が進学も就職も放棄してHSUへ「入学」。文科省では学校の卒業生の進路などをまとめる学校基本調査を毎年実施していますが、文科省の担当者は本紙の取材に対して、HSUへの「入学」は学校基本調査において「進学」とは扱われず、進学や就職の準備ともみなされないと語っています。

もともと幸福の科学大学は、教祖・大川隆法総裁を地球至高神として崇める「エル・カンターレ文明の発信基地」として世界伝道の拠点となることを目指しており、HSUもそれを踏襲しています。法律上「学校」ではないばかりか、施設の運営主体も趣旨も完全に宗教です。

■出場者に罪はないが……

もちろん、HSU生たちが主催者を騙して出場したということでもない限り、HSU生に罪はありません。認可されないような大学の設置計画を立て、認可されなかったのに若い信者をそこに通わせている教団側の問題です。HSU生がミスコンを開催するのは自由ですし、イベント主催者が参加を承諾している以上、HSU生がそこに出場することも何ら問題はないでしょう。

しかし今回、フジテレビのアナウンサーがステージ上で「全国の大学で行われているミス・ミスターコンテスト」と説明し、HSUが大学ではない旨を告げることなく他の大学の中に混ぜてHSUを紹介しました。大学ではないものを大学であるかのように観客たちに告知してしまったのです。

「掲載大学一覧」として「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティー」を掲載している「MISS COLLE」

このイベントは、全国のミスコンを集めて掲載している「MISS COLLE」「MR COLLE」に登録されたミス・ミスターコンテストの出場者を集めたものでした。これらのサイトでも、「掲載大学一覧」と称して、本物の大学と一緒に「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティー」を並べています。HSUが大学ではない旨の説明はありません。

■法令も想定外

文科省に取材したところ、担当者も困惑気味。

「学校教育法第135条では、大学ではないものが大学と名乗ってはならない旨を定めていますが、“ユニバーシティー”という単語については定めていません。“ハッピー・サイエンス・ユニバーシティー”という名称は現状では違法ではありませんし、正規の大学でない旨はHSUもウェブサイトなどで明記していますから、その点では問題とは言えない。第三者がこれを大学であるかのように誤解させる紹介の仕方をすることについては、そのようなケースを想定したルールがなく、私個人としても類似のケースを聞いたことがない。現状では、民間企業に文科省として注意や指導をするのは難しい」

今回のように第三者が大学でないものを大学であるかのように一般に向けて紹介するなどという事態は、文科省としても想定外だったようです。

■パチンコ屋じゃない！

学校教育法第135条は、「大学」も含め学校としての認可を得ていないものが学校の名称を使うことを禁じています。担当者によると、「これは飽くまでも一般の人々を誤解させることを防ぐことが趣旨。誤解させる恐れがないほど明らかに大学ではないものが大学を名乗るケースについてまで規制しない」とのこと。街で見かける「パチンコ大学」という名のパチンコ店を本物の大学だと誤解する人はまずいないので、文科省はそんなものについてまでとやかくは言いませんよ、ということです。

しかし本物の大学と並べて大学ではないものを大学として紹介している今回の件、「一般の人々を誤解させることを防ぐ趣旨」には明らかに反しています。HSUには「校舎」もあれば「入試」や「学祭」もあります。「プロフェッサー」を名乗る教員による授業も行われています。誰がどう見てもパチンコ屋ではありません。

フジテレビ・お台場みんなの夢大陸事務局によると、今回のイベントは「MISS COLLE」「MR COLLE」を運営する株式会社エイジ・エンタテインメントの持ち込み企画であり、事務局としてはイベント内容を把握していないとのこと。エイジ・エンタテインメントに取材を申し入れていますが、現時点では回答はありません。

ミスコンに詳しくない本紙・藤倉善郎総裁のコメントです。

ついにミスコン出場か

「フジテレビが自社のイベントの一部として社屋前で行われた企画の内容を把握していないというのも、マスメディアとしてずいぶん無責任な話。しかしそれはそれとして、HSU生が一般の大学生と差別されることなくこうしたイベントに参加できるのは素晴らしいことだ。“大学ではない”“宗教だ”という理由でHSU生が出場できなくなるようなことは、決してあってはならない。問題なのは、イベント主催者が大学ではないものを大学であるかのように紹介している点だけ。観客などに誤解させないよう、大学ではないことを明示すればいい話だ。その上でなら“ミス・ミスター勝共UNITE”や“ミス・ミスターオウム真理教”、さらには“ミス・ミスター全国霊感商法対策弁護士連絡会”“ミス・ミスター日本脱カルト協会”などの参戦も期待したい。私自身はいつでも参加する用意がある」