日本統合医療学会(IMJ)は、「全日本鍼灸学会」「日本アーユルヴェーダ学会」「日本ホメオパシー医学会」など19の「IMJ関連学会」を擁する団体で、鳩山元首相に対して統合医療推進を提言するなどしてきました。この学会には、医師等、医療関係者も多く関わっているようです。8月24日の日本学術会議会長談話以降、日本医師会、日本医学会、日本助産師会、日本薬剤師会が相次いでホメオパシーを否定する声明を出すなか、日本統合医療学会は以下のような「見解」を26日付で発表しました。
【日本統合医療学会 2010年08月26日】ホメオパシーに対するの日本統合医療学会理事長の見解
日本統合医療学会会員各位
昨日(8 月25 日)の朝日新聞(朝刊)に、“ホメオパシー”に対する日本学術会議の見解が述べられ、大きな話題となっています。
この新聞報道は、ホメオパシーの“或る団体”の不正事件を大きく取り上げたものであり、更には発表された「日本学術会議会長談話」には実態と異なる内容が含まれており、結果として誤解を生む内容となっています。
そこで、日本統合医療学会として、
1)日本学術会議に、早急(9 月中旬)に、公開討論会の開催を呼びかける。その場に於いて、ホメオパシーに関する国の内外の実態を明らかにすると共に、統合医療の立場を明確にする。
2)関係諸団体に対して、統合医療の立場を明確に伝えるよう努力する。
統合医療理事長の見解
A)ホメオパシーについて
① アメリカ国立衛生研究所(NIH)では、ホメオパシーは代替医療の分野として、調査研究の対象となっており、当学会でも同意見である。
② 諸外国に於いては、ホメオパシーの有効性の報告が多くあり、ホメオパシーは研究の対象であると考えられている。
③ 今回、問題となった「ホメオパシーの療法」は、助産師の職権を逸脱した医療行為であり、しかも、独断で正当な医療を排除したとすれば、それは正に犯罪行為であり、処罰されるべきである。今後、この様な問題の発生を防止する為、国家は厳しい規制を考える必要がある。
B)統合医療および代替医療について
① 医療としては、科学的エビデンスのある近代西洋医学を中心に進めるべきであり、代替医療は、それを補うものとして利用すべきである。がんの末期や難病など、現在の近代西洋医学が治療不可能なものに対しては、患者とのコンセンサスの下に代替医療の利用を検討する必要があると考えている。最後まで患者を見捨てない患者中心の医療が統合医療である。
② 各種の代替医療について、安全性、有効性、さらに経済性の3 点について調査研究する必要があり、適切なものは利用を推進し、不適切なものについては、国家としてガイドラインを設け、規制すべきである。
③ 代替医療には現時点で安全かつ有効で利用すべきものが多く存在する。今回のような不適切なホメオパシーの団体の不適切な使用の事件により、安全で有効な代替医療が否定されることがないようにしたい。
一般社団法人日本統合医療学会理事長渥美和彦
■世間様向けではなく、身内宛の見解です
冒頭部分の「日本統合医療学会会員各位」という表現からわかるように、この「見解」は日本統合医療学会の会員宛のものです。世間様やメディアに宛てたものではありません。
医療系の各団体の声明を読むと、各団体自らが疑似医療を推進してきたわけでもないのに、医療に携わる者の責任として疑似医療問題に対処しなければならないという姿勢を明確に見せているように見えます。当然のことです。
一方の日本統合医療学会は、ホメオパシーのような疑似医療を含めた民間療法などを推進してきた側であり、医師が多く関わっている団体でもあることから、前述の医療系団体以上に直接的な「疑似医療問題の当事者」です。にもかかわらず、自ら社会に向けて説明や意思表明をせず、「安全で有効な代替医療が否定されることがないようにしたい」などと、自らの利害関係を優先する姿勢を恥ずかしげもなく表明しています。
また、朝日新聞の一連の報道を<ホメオパシーの“或る団体”の不正事件>などと矮小化して、さも自分たちのホメオパシーとは別物だと言わんばかり。ほとんど他人事のような態度です。
■騒動に便乗して自己宣伝ですか
「見解」の中では、<各種の代替医療について、安全性、有効性、さらに経済性の3 点について調査研究する必要があり、適切なものは利用を推進し、不適切なものについては、国家としてガイドラインを設け、規制すべきである>としています。
国家としてのガイドライン作りは大歓迎ですが、さしあたっては「科学的根拠がない」「逆に有害である」ことが明らかなものを排除するガイドラインだけで充分です。ホメオパシーのような「ただの水と砂糖玉」の効果を国が研究する必要はありません。ホメオパシーが騒動になったからといって、「統合医療」とやらを国が研究する必要性が増したことにはなりません。必要なのは効果についての研究ではなく被害についての調査です。
日本統合医療学会の「見解」は、ホメオパシー騒動を逆手にとって「国による統合医療研究」の必要性を主張しているにすぎません。長妻昭厚生労働相のコメントが、現時点では日本統合医療学会と同じ発想であることが、非常に気がかりです。
■公開討論会が大好き。でも相手にされず
「見解」の中で日本統合医療学会は、日本学術会議会長談話について「実態と異なる内容が含まれており、結果として誤解を生む内容」としています。しかし何がどう実態と異なるのかや、どのような点が誤解なのかについて一切説明していません。ほとんど、日本ホメオパシー医学協会と同レベルのクオリティです(本紙<日本ホメオパシー医学協会につけるクスリはあるか>)。
それでいて、日本学術会議に対して公開討論会の開催を呼びかけています。
実は今年2月、厚生労働省の「統合医療プロジェクトチーム」が初会合を行った後、日本医師会が記者会見で懸念を表明しました。このときも日本統合医療学会は、反論声明を発表し、「統合医療に関する公開討論会を開催することを提案」していました。もちろん、これが実現した形跡はありません。
日本統合医療学会は、権威ある団体との討論をやりたがります。しかし実際には全く相手にされていないようです。
25日、日本学術会議会長・副会長の記者会見では、日本ホメオパシー医学協会機関紙の記者も質問に立ったのですが、金澤一郎会長から「議論はしませんよ」などと軽くあしらわれていました。質問をすること自体は許可されていましたが、質問内容はぐだぐだでした(本紙<ホメオパシー、袋叩きに=日本医師会・日本医学会も参戦>)。
相手にする価値がないことが明らかなのに、「公開討論会」とか言われても、よけい面倒くさがられるだけです。その点でも、日本統合医療学会の社会性のなさがうかがえます。
6 コメント:
似非科学を推進する団体は内容に関わらず古今東西例外なく、「公開討論」をしたがりますね。
C.R.ドーキンス等もたびたび書いてますが、「彼らにとって討論の内容はどうでもよく、討論でこてんぱんに論破されてさえ、相手に討論に応じさせた時点で勝ち」なのでしょう。
『討論が行われた』=『討論に値する内容がある』と世間に誤解させるのが目的なので…。
(その点で、学術会議会長が「議論はしない」と言いきっていることを評価します)
同じように、もし「国による統合医療研究」の結果として「効果がない」という結論が出たとしても、彼らには全くダメージはないのだろうと思います。
『「国による統合医療研究」が行われた』=『研究に値する内容がある』というイメージを演出することができれば勝ちですから。
それを思うと、厚生労相の発言はあまりにも無邪気すぎ。
> 『「国による統合医療研究」が行われた』=『研究に値する内容がある』という
> イメージを演出することができれば勝ちですから。
じゃあ、「やや日刊カルト新聞」が統合医療学会や由井寅子さんに公開討論を申し込んでみたら、どうなるんでしょうね(笑)。会場はやっぱ、ロフトプラスワンとかネイキッドロフトとかで。
是非実現してくださいwww
まず「日本学術会議会長談話に対する本紙の見解」を公表して、権威ある団体のふりをするところから始めますか(笑)。
権威あるロフトの平野さんにも相談してみよう。
日本統合医療学会 渥美先生と以前お話したことがありますが、彼はそれぞれの代替医療について、ほとんど知識がないようにお見受け致しました。
また、各関連団体においては、自分たちの利権と予算を確保したいがための、資格化への動きが活発化しています。
民主党政権のあるうちに・・・と言う目論見のようです。
書込み失礼致しました。
日本統合医療学会とか、アーユルヴェーダ学会など
こういう団体の上には現代医学の医師が君臨しているけど、
結局こういう連中の金儲けの舞台になっている。
利用されるのは、そんな先生方を崇拝し媚び諂い、機会があれば金儲けに加えさせてもらいたいと願っている人も多い。
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