【社説】マスコミは尖閣上陸日本人の所属政党記載を

9月18日に幸福の科学による宗教政党「幸福実現党」党員のミュージシャン・TOKMA氏らが尖閣諸島・魚釣島に上陸。TOKMA氏らが石垣島でマスコミ各社の取材に応じたにもかかわらず、「幸福実現党」の名を報じたメディアはごくわずかだった。TOKMA氏らは、せっかく犯罪を犯してまで魚釣島でホウキを抱えて「幸福実現党政策応援歌」まで歌ったのに、幸福実現党の名をアピールすることはできなかった。


幸福実現党党員による魚釣島上陸事件を紙面で報じた全国紙や地方紙は、翌9月19日の時点ではゼロ。同党の名を報じたことが本紙で確認できたのは、『朝日新聞デジタル』がweb上に掲載した記事のみだ。

09年の結党以来、幸福実現党は選挙報道の際に新聞・テレビから「諸派」と表記され、党名を報じてもらえないことが多く、マスコミ各社に党名を記載するよう申し入れなどを行っている。しかし今回は、むしろ選挙出馬以上に世間を騒がせる大問題だ。にもかかわらず、今回は党名どころか「諸派」との表記すらしてもらえなかった。

あまりに不当な扱いではないだろうか。

今回の上陸について、党員を名乗ったTOKMA氏は教団の機関誌『ザ・リバティ』の取材に対して「今回の行動は幸福実現党の指示等によるものではなく、あくまで個人の意思に基づくものである」と語ったとされている。しかしTOKMA氏は魚釣島に上陸した際、ギター代わりにホウキを抱え、幸福実現党政策応援歌である『I LOVE ジパング』を歌った。



「個人の意思」で上陸したとは言え、幸福実現党政策応援歌を歌いメディアの前で党員を名乗った以上、党の指示があったかどうかにかかわらず、これはTOKMA氏による党活動・政治活動の一環であると捉えるべきだ。

日中の緊張がピークだった18日の尖閣上陸は、社会に重大なインパクトを与えた。中国外務省の報道官は、この上陸を受けて報復を示唆する発言をし、続いて日本の羽田雄一郎国土交通相は19日に軽犯罪法違反容疑で沖縄県警に被害届を提出する意向を表明している。

『ザ・リバティ』は、被害届について＜「勇気ある行動」に対して、なんと日本政府が「裏切り」に出た＞などと主張しているが、そんなことはどうでもいい。問題は、この騒ぎが宗教政党がらみだという事実だ。

マスコミ各社は、今回の上陸事件を、幸福実現党による売名行為と考えたのかもしれない。上陸した人間の所属政党を報じれば、売名行為に加担することになる、と。

しかし本紙がこの事実を紙面で伝えたところ、ネット上では幸福実現党に対する批判の声や「売名行為」との指摘も目についた。このタイミングで世間を騒がせ党名を口にした泡沫政党の党員の行動を見て、そこに売名行為の可能性を見いだせないほど、我が国の国民はバカではない。

所属政党の記載は、売名行為に加担するどころか、むしろ正確な事実を報じる上で不可欠だろう。

マスコミ各社は即刻、尖閣に上陸した人物の所属政党を記載せよ。「諸派」と。