統一教会の女性連合幹部が正体隠して中高生に“純潔”性教育（後編）

統一教会の純潔イベントで講演する荒井敦子“議長”

前編記事で追及した統一教会の女性連合幹部・荒井敦子による学校現場へのカルト浸食問題。

後編となる本記事では、 荒井敦子が使うスライドと統一教会二世教育教材との相似性を検証する他、荒井敦子本人のインタビューも掲載する。

更に組織的な純潔教育の啓蒙活動を行なう統一教会系組織との連携や、子宮頸がんワクチン問題に首を突っ込む教団関連組織の思惑について論じる。

◆二世信者純潔教育と同じイラストを使用

荒井敦子が講演で使用しているスライドの中に、統一教会が二世信者を合同結婚式へ導くために施す純潔性教育教材と全く同じものが複数あることが判った。

以下の10枚の画像は2012年7月、統一教会の地区教会の１つ、調布教会に於いて純潔講師”吉松栄子先生”が二世信者である中高生を対象に行なった純潔教育のスライド写真だ。

統一教会調布教会が二世信者への純潔教育で使ったスライド（調布教会HPより）

統一教会の純潔教育講師“吉松栄子先生”

これら統一教会の二世に対する純潔教育で使用されている教材が、荒井敦子が講演で使うパワーポイント内の図柄やイラストと酷似しているのだ。

荒井敦子が講演で使うスライドの図柄やイラストが二世教育教材と重複

統一教会が教団内部で過度な純潔性教育をしているだけであれば、人権侵害被害を被り続けている当の二世信者には気の毒だが、教団の枠を超えた社会問題にはなりにくい。

しかしながら、一般の学校に於いて、一見まともな性教育授業の体裁を採りながら、実際には統一教会流純潔教育を生徒に行なっているとすれば、これは大きな問題である。

◆荒井敦子は正当性を抗弁「教会とは関係なくやっている！」

これら問題ある授業の講師・荒井敦子に筆者は昨年、電話インタビュー取材を行なった。

──統一教会との関係は？

「関係ないですよ、やってること自体と。聞きたいなら向こうに訊いてください」

──学校側に統一教会の関係者であると告げてませんね？

「統一教会関係者だと学校側に言う必要もないですよ」

──家庭再建教育研究所については？

「家庭再建教区研究所は個人的に作った、WFWPや統一教会とは関係ない 」
「宇都宮の支援者の自宅を電話等の取次ぎ場所としていたが、その人が忙しくなったため、大田原市の自宅を事務局としている」

──全員WFWPの人？

「その人もいますし違う人もいます。何かと言ったらお母さんたちは同じ心情なんですよ」

──統一教会が二世信者に対して行なう純潔性教育の中で、荒井さんのと同じスライドが使われているが？

「使ってるかもしれない、使いたいとういう人には使わせてあげているから」

──「水からの伝言」や「ゲーム脳」は根拠のないニセ科学では？

「雑誌社とか批判する人にどんどんどんどん言っておいてください。私たちはキチっと実験してます。お母さんの例題あります。あの話は学校の先生の要望で入れた」

──腐らない米は？

「実験した。体験した。こういうのがありますと。初めにハッキリこれは物理的にはまだ出ていないので反対する人もいますけれども写真もありますので」

──物理の法則に反する事柄を子供たちに教えることは問題では？

「鈴木さんは私に反対しようとしてやってるんですか？反対して潰そうと思って電話してきてるんですか？」 「鈴木さんは考え方が全然客観的なの」

（客観的ならいいと思うが？？？）

──性教育は大事だが、講師の選定が問題ではないかということで取材をしている
──学校側に、荒井さんがWFWPや統一教会の関係者だと認知されていない

「そこ（統一教会）とは全然関係ない」

統一教会の純潔教育と荒井さんの自己抑制教育はイコールではないのか？荒井さんのそういうバックボーンを学校側や保護者に知らせないまま講演するのは問題ではないか？

「二世は関係ない。こういう話要らない。二世はこういうこと言わなくても最初から信仰的に教えている」

──荒井さんのバックボーンを学校側や保護者・生徒に知らせないまま講演していることに問題があると思う。統一教会は性的なものも含めて人権侵害を起こしてきた社会的に問題ある団体だ

「私はそれを問題としていない。キリスト教会にも仏教にも入っている」
「統一教会のために作ったわけではない」」

──荒井さんはWFWPメンバーと活動しているし、WFWPの活動としてやっているのでは？家庭再建教育研究所＝WFWPという理解でいいか？

「何でイコールなんですか？」

──荒井さんはWFWPの理事でWFWP栃木代表ですよね？講演料を受け取っている以上、説明責任がある

「貰わなくてもいい、出さないとこいっぱいありますよ。鈴木さんは子供の教育ことを一切考えてないと思う」

──スライドに出てくる幸せそうな家族写真は統一教会の祝福家庭？

「そんなのどこから取ったか分かりませんよ」

──一般の人ではなくWFWPメンバーが地区を割り当てられて“荒井先生”の講演の売り込みをしているとの情報があるが？

「いいと思う人がいれば売り込んでくれて、そんなの一般の人もやってますよ、たくさん」

毎回同じ原稿を読む荒井敦子“議長”（PTA関係者への講演映像から）

 「子供たちをなんとかしたいと思ってやっている。思春期の犯罪増えている、マンガとか悲惨、パソコンとか、ゲームとか、鈴木さんは一切関係ない次元から来ている」

──荒さんは統一教会では上の方の立場？

「古いからそれはありますけど」

──予防型性教育とその講師の背景、つまり荒井さんの経歴との関係に問題があるのでは？

 「誰もそんなこと気にしていない、子ども達をなんとかしたいと思っている。統一教会に入るわけでもない」

──勧誘しているとかではないと思うが 、保護者がそれを知った時に自分の子供にそういう授業を受けさせたいと思うか？

 「鈴木さんは統一教会に偏見があるから」 「統一教会はこの問題に関心ない」

──PLA（Pure Love Alliance Japan）やAPTF(真の家庭運動推進協議会)そして世界日報でもこの問題を取り上げているから、関心がないということはないのでは？

「関心ある人は関心あるのでは」

──荒井さんは長野の統一教会信者の純潔ラリーでも世界平和女性連合理事として「エイズ時代に生きる」の講演をしている

「呼ばれればどういうとこでもやってると言ってるでしょ！」

統一教会の純潔イベントで120人の青年信者とと中高生二世信者の前で講演する荒井敦子

　　　　この統一教会に因る純潔イベントは統一教会の公式HPにも記載されている。


「鈴木さんが子供のこと本当に考えているんだったら話はしたいが、鈴木さんの思いは子供の事と関係ないんですよ」

──一般の子供の事も統一教会の子供の事も考えていますが？

「いやいや全然考えてない」

　　　ここから荒井敦子のメディア批判が始まる

「メディアがもう少しやってくれれば何もこんなことしなくてもさ、子ども達に口酸っぱくさ、言わなくっていいんですよ。結局なにが悪いってメディアが悪いから」

「鈴木さん自体の良心に於いては子供たちをどうしていこうとしてるんですか？お母さんたちに対して。鈴木さんの良心はどこにあるの？」

── 一般の子供に対する荒井さんの性教育も問題があると思うし、統一教会が二世の子供たちにおこなっている性教育もまた問題だと思っている

「それはそれで向こうに言ってくださいよ。向こうのことに関係している間がないんですよ」

──統一教会の二世に直接講演やレクチャーはしていないのか？

「呼ばれればどこでもしますけど、そんなに呼ばれないですよ」

──じゃあやったことはあると？過去に

「呼ばれた時はやりますよ」 

──荒井さんが講演した学校にいくつか訊いてみたが、荒井さんの経歴を知らなかったというところが殆どだった

「それ訊いて何よ！洗いざらい喋って！」

　　　　激昂した荒井敦子は記者の取材方法を非難する言葉を捲し立てる

──講演料を受け取って講演しているのだから荒井さんには説明責任がある 
──荒井さんの背景を・・・

「先生方も私の背景が何だとかそこが問題ではないんですよ。私たちがやっている『子供たちがどうすれば良くなるか』　鈴木さんはそこが何も判っていない」

──自分の子供にどういう教育を受けさせるかということについて、ちゃんとした情報を与えられなければ保護者は選択もできない

「聴いたらわかるじゃいですか？」

──全く実体のない家庭再建教育研究所の肩書きだけでは判らない。統一教会とか何も出てこないじゃないですか？

「鈴木さんは話していることではなくて肩書きに興味があるんでしょ。何々大の教授とかいう肩書があればどういう話をしてようとそれに対して安心するんですよね？」

──一言もそんなことは言っていないが？

「講師の産婦人科の先生が性器を見せようがコンドームの使い方を教えようが肩書がキチっとあるから、鈴木さんはそうでしょ？」

──今そういう話はしていない

ニセ科学を用いていることについて更に追及した

──講演の内容も非科学的なことを相当仰ってますね？

「非科学的な事っていうこと自体が何かというと、『これは科学では証明されないですよ』と最初に言ってる。実験した人もいるしってね」

──『水からの伝言』は道徳の時間で使われて問題になったが？

「だから分かってますよ。でも分かってってもやっぱり子供たちにも綺麗な言葉と、そして何かというとお母さんが私の話を聴いて何人か実験しましたよ」

──全てがそうなったんですか？炊いたご飯が腐らなかったんですか？

「そうそうそうそうそう、腐らなかった（→ありがとうご飯）とか真っ黒けになった（→バカ野郎＆無視したご飯）」とかね

──それはどこかに発表とかされてますか？写真を出したりとかして

「真っ黒になったり、ちょっと話し方を変えてみたら半日で子ども達が本当に変わりましたとかね、いろんなこと全部言ってくれますよ。だから話自体は『言葉自体が大切だよ』と子供たちに分からせてあげたいために」

──『言葉が大切だよ』と云うことを子供たちに分からせるために、非科学的なもの、ニセ科学を用いるというのはどうかと思うが

「鈴木さんは批判批判批判批判 、これ批判して何をしようというんですか？子供たちを良くしようということではないですよね？統一教会は出てきても子供の話は一切出てこない」

──私のことをどう思おうと勝手だが、私はそういう意識ではやっていない。統一教会の子供も心配だし、荒井さんの話を聴いた一般の中高生がどう受け取ったかということに興味を持っている

「子ども達がポルノとかホモとかテレビで不倫を観てどうなっていくか心配しないんですね？」

──それは話のすり替えであって、私はそういうことを言ってるのではない

「鈴木さんと私の違いはそこなんですよ、結局、日々日夜今日も子供たちがそういうものに触れながら結局、援助交際やSEXに走っていく子供が今日もいるという こと。それに対するを危機感、なんとかしたい。こういうのに巻き込まれて、これがいいものとして美しく書かれてますよ。そして憧れとしてそして妊娠してし まって一生が台無しになりますよ。その思いは私にとって統一教会であろうと左翼であろうと関係ない」

──これだけいろんな社会問題を起こしてきた団体の一員であり、しかも幹部という上の方の立場の人なんだから「統一教会とは関係ない」と言ってもそれでは話は通らない

「それは向こうの方でやったことに対して非難すればいいでしょ！そこは関係ないですよ」

──統一教会の起こしてきた社会問題は関係なくないですよ。荒井さんが統一教会関係者であると明かした上でやってるならまだ分かるが

「そんなこと誰も誰がどの宗教なんて関心ないですよ」「お母さんたちを救ってあげる、子ども達を救ってあげる、その気持ちがあるならば・・・」

──荒井さんの熱い気持ちは充分解ったが問題はそこではないと思う

「鈴木さんからは子供たちの話が出てこない、関心ないでしょ！？心配してないでしょ？」

──荒井さんの話を聴かされた子供たちが心配なんですよ

「何言ってるんですか！！子供たちは365日、テレビ観てマンガ見てゲームしてるけど私の話は１時間以内。子供たちの頭からは消えていく」

──伺っているのはそういうことではない。質問と関係ない答えばかり返ってきますね

「鈴木さんはポルノとか推進してる派でしょ？メディアだから」

──何でも決めつけないでください

「子供たちに本当の夫婦とかお母さんがどういう風に思っているかとか・・・」

──それは統一教会の祝福家庭が理想ということですか？

「何を考えてるんですか、向こうは向こうでやってもらったらいいと言ってるじゃないですか」

──荒井さんの主張は重々解りましたが、そうではなくてその荒井さんを講師として招聘している学校に充分な情報が与えられているのか？講演を聴いている生徒や保護者に充分な情報が与えられているか？そういうところを問題視しているだけです

──学校にどの様な外部の講師が招聘されて、どのような教育をしているかということは、とても大事なことですよね？生徒にとっても、保護者にとっても

「鈴木さんが言ってるのはどこかの教授とか先生とか肩書きのことばかり」

──返答が脊髄反射ばかりですね　



荒井敦子は、自身が統一教会やWFWPの関係者であることは渋々認めたが、性教育の講師としての活動に関しては「私たちがやっていること自体、統一教会とは関係ない」と話した。

「腐らない」と言う“ありがとう御飯”については「物理的には出てこないが、友人の実体験」と繰り返し主張した。


◆WFWPのHPから荒井敦子の嘘が発覚

荒井敦子は筆者に対し「パワーポイントは自分で作った」「WFWPや統一教会とは関係ない 」と話しており、二世純潔教育と同じスライドを使っていることについては「向こうはやってないでしょ、私が作ったから」と主張した。
しかしながら、WFWPのHPには「『2007年に、WFWP日本で開発した教材「エイズ時代に生きる」の英語版』」との記載がある。

WFWPのHPより『「エイズ時代に生きる」は2007年にWFWP日本が開発した教材』との記述あり

WFWPのHPの記述から,教材「エイズ時代を生きる」はWFWPが作ったものと判明した。

◆教頭や教諭も呆れたニセ科学“腐らない御飯”　「もう招聘しない」

今年度になって荒井敦子が講演を行なった学校が新たに数校判明した。当該学校を取材してみると、どの学校でも講演の内容に対し教諭や生徒から疑問の声が挙がり「総じて評判が悪かった」という。

その中の１つである公立高校の教頭先生は語る「最後の腐らない御飯の話が出てきたときには驚いた。生徒も呆れていた。紹介した養護教諭も呆れており、教員からは押しなべて不評でした。今後本校では、もう呼ぶことはないですね」

◆講師の選定の難しさ。性教育の講師は人材不足？

保健所を介して荒井敦子が学校に入り込んでいたケースもあった。
当の保健所の担当者は、講師選定の難しさと人材不足、そして『荒井敦子』をインターネット検索した際にマイナス情報がなかったことを挙げ、統一教会関係者であるとは判らなかったと答えた。

今後は本紙の記事により、荒井敦子の“正体”が周知されることを期待したい。

◆自治体で講師登録

荒井敦子は、一昨年まで大田原市の講師人材バンク『輝きバンク』に登録されていた。・

昨年、統一教会との関係を指摘された市は荒井敦子の講師登録を抹消、現在荒井敦子の情報は削除されている。

他の都道府県に於いても、PTA講師として荒井敦子を掲載している自治体もあり、荒井敦子以外にも統一教会関係者・WFWP関係者と思しき女性講師の名が登録されている自治体のリストが複数確認できた。

WFWPが組織的に純潔教育啓蒙の工作を行なっていることが窺える。

◆子宮頸がんワクチン接種問題と純潔教育

統一教会機関紙の世界日報では度々自己抑制教育（純潔教育）の記事が掲載されている。

教団関連団体主催の純潔デモ“純潔ラリー”では、二世信者などを多数動員して「子宮頸がんワクチン無料化よりも性倫理教育の徹底を！」などと訴えるデモ行進を全国各地で展開している。

“純潔ラリー”で子宮頸がんワクチン反対を訴える信者たち

統一教会関係機関が、子宮頸がんワクチン接種問題に首を突っ込むのは、子宮頸がんに罹患する原因の一つとして早期の性交渉が挙げられているためだ。この点に関し、統一教会流純潔教育との親和性の高さが指摘されている。

但し、世界日報の編集委員の一人は、筆者の問い掛けに対し、子宮頸がんワクチン接種の問題と統一教会純潔教育の関連を否定している。

◆複数のカルトによる教育現場汚染

保護者が知らないうちに生徒に忍び寄るカルトの影。

教祖が信者に対する強姦罪で逮捕され服役しているカルト宗教団体・摂理は、信者を教師として多くの高校に送り込んでいると言われている。生徒への勧誘被害も懸念されており、実際に勧誘被害の報告も挙がっている。

◆二世の感想から滲むカルト教育の深刻さ

以下は前述の統一教会調布教会での純潔教育を受けた二世信者の中高生の感想の抜粋だ。

【統一教会調布教会HP　2012年8月14日】

「純潔教育」についての講話を聞いた中高生の感想から　（抜粋）

「純潔の大切さを改めて深く学べました。小さい時からつい最近まで親や教会の人に純潔の大切さを何度も聞きました。その大切さの意味がなんとなくわかりませんでしたが、よく理解できました」

「性感染症の話は、学校の保健で教えられた内容と異なっていました。ＨＩＶなどの予防策について、保健の教科書ではコンドームなどの使用などが書いてあった けど、やっぱり１００％防ぎきれないと思うし、結婚前の性行為を教育機関が黙認していることにも疑問がある。やっぱり、「純潔」が一番なんだと、今回のお 話で確信を持てました。今後、学校教育にも純潔教育が取り入れられるべきだと思います」

「良心の声にもっともっと従って生きようと思いました。ドラマとか漫画を見たり読んだりするので、そういうのに流されないように気をつけます」

「純潔教育は幼い頃から何度も受けてきて、二世はその重要性を理解している人も多いですが、世の中の人全てに純潔の大切さをわかってほしいし、私たちが伝えていかなければならないと感じました」

「まず純潔は絶対に守るという意志を持ちたいです。また、良心に耳をかたむける時は良心に必ず従っていこうと思います」

「家庭や社会の中で、お手伝いやきれいな善の言葉を使うなど、ために生きることをしたいと思います」

もし突然、一般の家庭の子供がこんなことを言い出したら、保護者は仰天するだろう。荒井敦子の講義を受けることは、偏ったカルト教団のトンでも教義に触れることでもある。

一般の学校で暗躍する荒井敦子やWFWPの活動を放置することは、教育倫理上からも問題があろう。

保護者は、自分の子供が通う学校に、どのような外部講師が招聘されているのか、どのような背景を持つ教諭がいるのか、今一度確認した方がよさそうだ。

（ 文中敬称略）