台湾慰安婦像キック問題で幸福の科学が台湾側を非難

幸福の科学の声明文

幸福の科学信者の政治活動家・藤井実彦氏が台湾・台南市に設置された慰安婦像を蹴ったとされる問題に関連して、幸福の科学が9月14日に公式サイトで声明文を発表した。藤井氏の行為を批判する内容は一切なく、そもそも原因は慰安婦像を設置した側にあるなどとする内容。声明の中で幸福の科学は改めて、慰安婦像を設置した台湾の国民党に向けて像の撤去を要求した。

キック藤井（またの名をストレッチ藤井）

幸福の科学信者であり教団の支援のもと活動してきた「論破プロジェクト」代表である藤井氏は今月6日、「慰安婦の真実」国民運動の幹事を名乗って台湾・台南市を訪れ、慰安婦像の設置を主導した地元市議会議員に像の撤去を求めるなどした。その後、同じ日に藤井氏が慰安婦像を蹴るような動作をしたことが判明し、日本台湾交流協会台北事務所前で約100人もの市民が藤井氏を名指して謝罪を求める抗議デモが起こった。連日、地元メディアも大々的に報じている。

藤井氏は10日、「慰安婦の真実」国民運動のFacebookページを通じて、自分が像を蹴っている証拠とされる画像は加工されたものであり自分はストレッチをしただけだと反論。これに対して、やや日刊カルト新聞社は菅野完事務所との共同企画として11日に幸福の科学総合本部前の公道で「エル・カンターレ像の前でストレッチするデモ」を決行した。15人の参加者を集め、幸福の科学への抗議活動を行った。

12日に「慰安婦の真実」国民運動は謝罪声明を発表。藤井氏は依然として慰安婦像を蹴った事実を認めていないようだったが、団体側は藤井氏が〈慰安婦像を蹴るような素振り〉をしたことは認め謝罪するとともに、藤井氏の幹事辞任を発表した。その上で、藤井氏が台湾訪問の際に地元市議に手渡した質問には回答するよう求めた。

幸福の科学は11日に公式サイトに〈「慰安婦の真実国民運動」と幸福の科学は一切無関係です〉と題する声明文を発表したが、藤井氏の関係については言及を避けている。

ところが幸福の科学が14日に発表した声明は、「慰安婦の真実」国民運動よりも藤井氏よりも強硬で過激なものだった。

公式サイトに掲載された声明文〈台湾の慰安婦像の設置に関する当教団の見解「幸福の科学は慰安婦像の撤去を求めます」〉がそれだ。〈現在、日本の保守系団体が台湾初の慰安婦像設置に対して行った抗議活動が社会の耳目を集めているところですが、そもそもの問題は、親中派の野党・国民党が主導して慰安婦像の設置を強行したことにあります〉〈捏造されたいわゆる“従軍慰安婦問題”を取り上げ、反日感情の高まりを狙った排日運動は、日台共通の価値観である「自由・民主・信仰」から台湾を遠ざけ、唯物論国家中国による台湾の植民地化を加速させます〉として、慰安婦像を設置した台湾の国民党に像の撤去を要求する内容。

この声明では、藤井氏の行動を〈慰安婦像設置に対して行った抗議活動〉と表現している。日本と台湾で報道され耳目を集めているのは、藤井氏が地元市議に像の撤去要求や質問をしたことではなく、像を蹴ったことについてだ。幸福の科学は、これを〈抗議活動〉と呼び、そもそも像を設置した側に問題があるとしている。

藤井氏本人は蹴った事実を認めないという立場だ。藤井氏が幹事を務めていた「慰安婦の真実」国民運動は〈蹴るような素振り〉については謝罪を表明した。しかし幸福の科学は、事実上「蹴られたほうが悪い」と主張しているに等しい。

教団のこうした姿勢を支えるのは、「従軍慰安婦問題は捏造である」という歴史観と、〈唯物論国家中国による台湾の植民地化〉を許さないという宗教上の価値観だ。中国が人権侵害国家だからといった理由ではなく、〈唯物論国家〉だからだめだという。こうした論理で、幸福の科学は女性の人権を訴える人々のシンボルを蹴る行為を肯定している。

「エル・カンターレ像の前でストレッチするデモ」を妨害する幸福の科学職員。とても、冒涜されて大凝っている人たちの態度には見えない。

一方で幸福の科学は、11日に東京・五反田の教団総合本部前で「エル・カンターレ像の前でストレッチするデモ」を行ったやや日刊カルト新聞社・藤倉善郎被告人兼総裁を非難する声明文も15日に発表。藤倉被告を呼び捨てにして〈前代未聞の信仰に対する重大な冒涜〉〈近代文明社会の一員として極めて不適切な行為〉〈この救いがたい愚行を犯した”宗教荒らし”をこれ以上放置してはなりません〉と激しく罵った。

慰安婦像は蹴ってよい。なぜなら設置した側が悪いのだから。しかし自分たちの本尊を足蹴にすることは冒涜であり許さない。

まるで彼らにとって「宗教」は、女性の人権を踏みにじってでも守るべき特権であるかのようだ。

藤倉被告のコメント：

「もし我々の行為がエル・カンターレ像を“蹴る素振り”だったり実際に蹴ったりするものだったなら、彼らにとって許せない冒涜行為かもしれない。女性の人権を訴える人々のシンボルである慰安婦像を蹴る行為も同じように、許されるものではない。我々はエル・カンターレ像の前でストレッチをしただけだが、幸福の科学がそれを冒涜と捉え声明文を発表したことで、幸福の科学が自分たちの宗教では許されないことが女性の人権を訴えるシンボルについてなら許されると考えている集団であることがはっきりした。取材対象をいじることで実態を可視化するというやや日刊カルト新聞のスタイルが最大の効果を発揮したケースと言える。幸福の科学は、反人権宗教であり、人権より優先して宗教の特権化を主張する宗教であり、反社会的なカルト集団だ」

◇関連記事
Twitter社が本紙・藤倉被告を凍結、鈴木主筆を再びロック＝復活から1日足らずで
Twitter社が“台湾慰安婦像キック”への抗議デモ主催者を同時ロック
台湾での“慰安婦像キック”問題で市民15人が幸福の科学に抗議デモ＝東京・五反田で
本日、幸福の科学総合本部前で抗議デモ＝信者による慰安婦像キック問題で