MC救世神教のウェブサイトより |
ワクチン接種に反対あるいは批判的な、いわゆる「反ワクチン」運動の問題が指摘される昨今、改めてその問題性が突きつけられた事件だ。
しかしMC救世神教の場合、問題は「反ワクチン」にとどまらない。もともと医療全般に対して否定的な同団体において、ワクチン否定はその思想と実践のごく一部にすぎないからだ。同団体の信者を親に持つ「2世」「3世」の信者たちは、手かざしによる「浄霊」で病気を治せると信じている親たちに育てられている。
MC救世神教は、世界救世教に所属していた後藤英男(故人)が1970年に独立して設立した。
世界救世教は岡田茂吉を教祖として1935年に立教されたもので、手かざしによる「浄霊」で病気を治すことができると提唱した。岡田の死後、多くの分派が生まれ、有名なものとしては神慈秀明会や世界真光文明教団がある。分派は大小含め無数に存在し、分派からさらに派生した団体もある。本家である世界救世教も含めて総称して「手かざし系」などと呼ぶこともある。
世界救世教において岡田茂吉は救世主(メシヤ)とされ、「明主様」と呼ばれる。分派においても同様に岡田茂吉を信仰対象の頂点に置くケースは多い。
2010年に、アトピー性皮膚炎からくる細菌感染で重篤な状態になった乳児に手かざしを行い、治療を行わずに死なせたとして、福岡県警が殺人容疑で両親を逮捕する事件があった。両親は、世界救世教の分派の一つで福岡県内に本部を置く「新健康協会」の職員だった。当時、同協会ではほかにも複数の子供が亡くなっているとの報道もあった。
同協会は現在でも、機関誌に「明主様」の言葉を掲載して、医療ではなく「浄霊」によって病気や怪我が改善したとする信者の体験談を掲載している。
今回の麻疹集団感染で問題が指摘されているMC救世神教も同様だ。同団体の公式サイトには、科学は非科学であり浄霊こそ科学として医療そのものを明確に否定する岡田茂吉の論文が掲載されている(浄霊は科学療法なり(一))。
ウェブサイトには信者たちの膨大な「体験談」が掲載されている。信者たちが医療拒否を実践し、団体がそれを推奨していることは明らかだ。中には〈ワクチン接種を迫られた私の体に大異変! 浄霊と祈りではしか抗体の数値が10倍に〉というタイトルのワクチン否定の体験談もある(リンク切れで見出ししか読めない状態になっている)。
感染症関連では「幼児の熱性痙攣 無医薬で快復」という体験談もある。子供が4歳のときと6歳のとき、2度にわたってインフルエンザにかかり6時間おきに1日3回もの痙攣を起こした際に「浄霊」で治し、7歳で発熱し意識不明になった際ですら救急車を呼ばず、すでに亡くなった親族の供養をしたら治ったという。親である信者の言葉として、〈「明主様にお任せして良かった。薬を飲ませなくて良かった」と、つくづく思います〉などと書かれている。
場合によっては、前述の新健康協会同様の「殺人事件」になっていてもおかしくないようなことが、ここでは美談として堂々と公開されている。
ワクチンや感染症に関する体験談はごく一部だ。それ以外の様々な病気や怪我、障害にかんして、「頭・脳」「目・耳・鼻・咽喉」「ガン・腫瘍」「アレルギー」「妊娠・出産」「乳幼児・小児」といった調子で分野ごとに無数の浄霊体験談が掲載されている。「乳幼児・小児」の体験談の中にある〈じん麻疹や高熱、目に障害をもつ子らに救いの光〉も、前述のような「殺人事件」の一歩手前とも言える内容だ。
長男はアレルギー体質でした。生後8ヵ月頃、少量なら大丈夫だろうと離乳食に卵を食べさせると、全身にじん麻疹が出て、痒みで大泣きし、呼吸停止の状態となりました。
すぐに姑に知らせ、支部長先生より電話でアドバイスをいただきました。そして、姑にご浄霊をしていただくと、全身に出ていたじん麻疹が次第に消え、呼吸ができるようになりました。長男は何事もなかったかのようにスースーと眠ってしまいました。
(略)
次男が1才8ヵ月頃のある日、朝から熱っぽく、元気がないので布団に寝かせていました。家事を済ませてから様子を見に行くと、次男は手足を硬直させ、上目を向いています。唇は黒い紫色に変わり、顔色が真っ青になっていました。
私は慌てて何度も次男の名前を呼び、強く叩きましたが、何も反応がなく、口から泡が出てくるのでした。抱き上げて背中を擦(さす)ると、体の力が抜けて手が下に落ちるではありませんか。顔を見ると呼吸が止まっていました。すぐに姑に連絡し、支部長先生に報告させていただき、明主様に必死にお願いしながら全身と頭の中心をご浄霊しました。
親は、子供が呼吸停止という一刻を争う事態に至ってもなお、119番ではなく支部長先生に電話をかけている。しかもこれを、長男に対しても次男に対しても繰り返しており、体験談には、支部長先生が救急車を呼ぶなどの対応をアドバイスした形跡は記されていない。
この体験談には〈会長先生に報告させていただくと、頭から出た湯気のようなものは、頭の毒素であると教えていただきました〉という記述もある。湯気が出るほどの発熱なら治療しなければ危険が増すのは明らかなのに、会長先生までもが、むしろ症状が好転に向かっている根拠(ニセ医療などの世界でしばしば「好転反応」と呼ばれる)であるかのような誤った認識を信者に与えている。
死者が出てもおかしくない状況が、決して「信者の自己責任」に基づいた個人的な判断ではなく、組織的に作り出されていることがわかる。
子供に対して、必要かつ可能な医療を受けさせないことは、明らかに子供に対する人権侵害だ。こういった行為を虐待として捉える「医療ネグレクト」という用語もある。大人の信者に対しても、本人が必要な医療を拒否するように誘導していく行為は広義での人権侵害と言えなくもない。
人権を侵害する具体的な行為が組織的に行われていることから、同団体を「カルト」と呼ぶ上でのごく基本的な条件は満たされている。
しかし一方で、自ら選んだわけでもないのに抗うことができず犠牲になる子供の信者(2世や3世)に対する直接の責任は、親である信者が問われてしまう。それが前述の新健康協会事件だった。
子供が犠牲になり、親である信者は団体に翻弄された犠牲者でありながら子供に対する加害者にもなる。家族の間に被害者と加害者の立場が入り組む複雑な不幸を生み出すのが、極端な教義を持つ宗教団体の問題だ。MC救世神教はこの構造を、子供の健康や生死に直結する形で備えている。その危険性は際立って高く深刻だ。
今回は麻疹の集団感染という問題として注目され行政の介入も行われている。しかし麻疹やワクチンの問題だけに目を奪われると、この団体の危険性を見過ごしかねない。今回の問題は、「反ワクチンカルト」ではなく「医療否定カルト」の問題が「反ワクチン」という側面から発覚したという図式として捉えるべきだろう。麻疹集団感染の問題が解決するだけでは、この団体の危険性は消えない。
行政の判断に反して本紙が団体名を報じるにあたり、本紙では事前に担当記者との間で議論をした。外部のジャーナリストからの助言も受けた。そして感染症をめぐる公衆衛生上の観点だけではなく、医療否定カルトに対する注意喚起の点でも、団体名を公表すべきとの判断に至った。
この団体の危険性を考えれば、団体名の公表はむしろ不可欠であり、県の方針に従って団体名を公表せず県の発表情報を右から左に流すだけなどという姿勢は、報道の役割を放棄することにほかならない。大手メディア各社にも、報道の役割を全うしてもらいたい。
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6 コメント:
世界救世教系分派の基本教義は「浄霊・自然農法・芸術」の三本柱。悪しき心や行いが魂を曇らせ、その曇りが肉体に毒素という形で現れ、その毒素の排出作用(=魂の浄化作用)として病気という現象が起こる、というのが岡田茂吉の病気観。この毒素排出のために行うのが浄霊で、毒素を貯めないような食事が自然農法によって作られた食材、ということになるので、岡田の病気観が教義の根幹に関わってるんだよね。
岡田にとって薬の作用とは、体内の毒素をまた別の毒をもって弱める、あるいは毒素の排出を抑えることで、毒素の排出作用(=病気の発生)を弱めたり抑えたりすること。これは病気の根本解決にならないどころか、毒をさらに蓄積させ、魂の曇りとか汚れとかを高めることになるのだから、彼らの霊性主義的な考えから言えば薬の摂取は有害な行いということになってしまう。
結局、医学を肯定することは、教義の根本たる岡田の病気観を否定することになっちゃう。だから、明主様の信仰者である以上は医学を肯定できないし、医学を肯定するなら信仰を維持できない。医学の受容と信仰が両立しない。なので、表向きはともかく、彼らが「本当に」近代医学を受け入れることはないだろうね。これはまさに「信仰」の問題。だから行政が指導したりメディアが批判したところで、信者に対しては効果はないだろう。これから新たにハマる人がいなくなることを期待するばかり(これはメディアの報道が有益だろう。やや日はいい仕事してると思いますよ)。
なお、世界救世教は浄霊の効果を科学的に証明しようと研究しているようだけど、だいぶ難しいと言うか、「浄霊にプラシーボ以上の効果はない」という結論にしかならなそう。
http://anticult.minibird.jp/shuumei/jikkenn.html
子どもが小学生の頃、絵の賞をもらったが、それがMOAからでした。
公立の小学校にどうして宗教団体が食い込んでいるのか、仕組みを知りたかったが分かりませんでした。
でも、そういう形でも刷り込みが行われ、いつかそういう子どもが世界救世教に関心を持つ可能性があるなら怖いです。
全国的なことだと思いますが、教育委員会は知っててやってるのでしょうか?
取材していただければ嬉しいです。
おや、藤倉善郎こんなとこで投稿していたんだね。
投稿した記事エイト君かと思ったよw
菅野完を説得し罪を償う為アメリカに行かせたら
世界救世教を信じてやるよ。
あの基地外のノイホイを改心させる奴が
この世にいるのかな。
うちの父親が働いているA型事業所なんですけど。調べましたら【世界救世教】と確認できました。確かにそこに勤め始めてから異常な発言とか可笑しな強要をしてくるようになりました。よくわからない状態で私も短期間勤務してみたら、マズいなって思ったので退職しましたけど。離職票を3か月間送ってこない等のトラブル(?)あるました。執拗に現在も勤務する父親を使って「戻ってこれば?」とか伝えてきます。なので今日教団名を調べてみましたら世界救世教と発覚してるので書き込みしました。被害受けたくないのでフェイスブックでここだ!って書き込みして来ました。入信とかもしてないですが何を勝手にやってるかわからない変な会社です。
近頃コロナで暇なので、あちこち見て回ると、どいつもこいつも常識がわからない唐変木が多いから、あきれ返っている。何だこりゃ?1
良いと思ってるのか偉そうにこき下ろしてるが、薬害ってのを知らないのか?最近じゃ子宮頸がんワクチンのニュースだってあるのに。薬ってのは、たくさん飲んだら体にいいってもんじゃない。それを盲目的に何にも考えず多量に体に入れたらどうなるかってことぐらい、ちゃんとニュース観てたらわかるはずだ。
それとインフルエンザワクチン、なんにも効果なんかないって厚労省も認めてる。こんなのを喜んでるのは日本ぐらい。ホルマリン漬けのウイルスの死骸の一部を体に注射したら、なんで罹らないって言えるんだよ。実際からいえば罹りやすくなっている。明石家さんまの言う通りあんなもの打ったら余計にかかりやすくなるのがオチなんだ。
医学が進歩したって言うが実際はこんな馬鹿なことをやっているっていう面がまだまだ多いんだよ。麻疹だって自分らの子供のころは、とっとと罹って一人前。まだ罹ってない奴なんかどんだけボンボンなんだよって週刊ジャンプの漫画の中でだって笑われていたもんだ。
それが今やワクチン打って罹らない奴が主流派。コロナでうんざりしてるのに、もっと伝染力の高い麻疹なんかにおびえて生きて何が楽しいんだよ。麻疹ワクチンは絶対的じゃないんだ。大人になって罹ったら大変じゃないか!ホントに不自然。こんなことしてたら人間は弱るに決まってるじゃないか。
それとこのミロクなんたら、これもまぁ、何が偉いんだか知らないが、ちょっとばかし薬害を知ってるからって、薬は毒だの一点張り。じゃあどうしろっていうんだ。ジョーレイってので治るとでもいうのか??
馬鹿言ってちゃいけないよ。おてんとうさまってのは平等なんだ。大自然、見ててわかんないのか?アトピーだのなんだの難しい病気に罹るってことは、本人なり家族なりが体に悪いものためこんだりしてきた原因があるはずじゃないか。そうじゃないとしても運が悪いってことには違いない。
なのになんでちょっと手をかざしたら治るって思えるんだよ。自分は特別だとでも思っているのか?
宗教とか入ってる人はホントに神様とか馬鹿にしてるのが多い。自分勝手に思い込んで、苦しい事を無理矢理無かったことにして、神様とか宗教を利用して自分は特別なんだと思いたがる。
薬を一粒も飲まないのがエリートだとでも思っているのだろう。呑まなくていいなら結構だが、飲まなければ死ぬのに呑まないようなのは○○○○に決まってるじゃないか。
皆言ってることは間違ってないが、どこまでも自分が正しいと思いすぎる。世の中そんな片寄った考え方したり決めつけてばかりいたらひどい目に会うし、だからと言ってふらふらと何にも決められない様な判断力じゃメチャクチャになる。今のコロナで騒いでる世の中、みんなそうじゃないか。ホントいい加減にしてほしい。
100%正しくないもの=全く受け付けない
という姿勢で生きていると、カルトや詐欺に遭いやすいのかなと思います。
自分の抱える問題にドンピシャでフィットする答えなり、治療なりを提供してくれそうなところに飛びついてしまう。
現実は、大方正しいと思えるものを複数自分に取り入れていって、螺旋階段を登るように迂回しながら問題の解にたどり着く、という生き方が、問題解決への近道だったりするのですが。
「これで合っているのだろうか?」と迷い、不安を抱えながら生きていくほうが、迷いがない生き方よりも自然なのです。迷いがあるからこそ、探求する。既成の考えを疑いながら、いろいろな情報と人間関係を取捨選択し、自分の頭で思索し、手探りで生きていく。だからこそ決断の責任を自分で引き受けられる。
この生きる上での苦しみを取り払って「何も悩んだりややこしく考えたりしなくていいよ。答えは私たちが提供するから。私があなたに指示したことをあなたが実行して何が起ころうとも、気にしないで。全て私たちに委ねればいい。」という安心感を与えてくれる対象。
それがカルトなのではないでしょうか。だからサリンも撒けるし、正体隠し勧誘もできる。
そして、脱会者や2世はカルト団体から脱しても、そのパターナリズムの呪縛から脱しない限り、他の虐待的な関係を引き寄せ続けるのだと思います。
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