幸福の科学の“住民対策実績”と大津市の学園問題

　滋賀県大津市仰木の里で建設が計画されている幸福の科学学園について、予定地周辺の住民たちが5月28日から建設反対の上りや看板の設置を始めました。これに先立って幸福の科学学園は、隣接2自治会が要望していた合同説明会の開催を拒否しました。他の地域の事例も含めて、幸福の科学による“住民対策”の実情をリポートします。


■新組織「仰木の里まちづくり連合協議会」がのぼり・看板設置へ

　のぼりや看板を設置したのは、今年4月に結成された「仰木の里まちづくり連合協議会」。仰木の里では昨年末に「北大津まちづくりネットワーク」が結成され、建設反対活動をしています。「仰木の里まちづくり連合協議会」は、これとは別に予定地周辺の10自治会の代表者などが中心となって結成したもので、「ネットワーク」の協力を受けて活動しています。

　「連合協議会」では、のぼり約200本、看板400枚を作製。5月28日から順次設置を開始しました。また本日6月5日には、「連合協議会」主催で「幸福の科学学園建設ストップに向けた緊急の集い」を開催し、これまでの経緯、現状、今後の取組みについて報告や質疑が行われることになっています。

■学園側は合同説明会を拒否

　のぼり設置に先立つ5月13日、幸福の科学学園は、予定地に隣接する2自治会が要望していた合同説明会の開催を拒否する返答を行いました。返答文書から、拒否の理由を引用します（原文ママ）。

・＜（要望の書面に）事実と異なる記述、また、「信教の自由」を行き過ぎて侵害する可能性がある記述が見られる＞
・＜文書の差出人も、「自治会 会長」とあるだけで、その御名前や連作先の記載もなく、送達された封筒にも、「市民センター内」という、責任の所在が不明確であります。＞

　学園側はこの文書で、＜今後も、住民の皆様へのご説明に関しましては、学園ニュースを数多く配布させていただくとともに、当学園が準備した様々な機会を設けることなどを計画しており、誠意を持って対応させていただく考えで降りますので、よろしくお願い申し上げます＞としています。

　学園側が何を＜事実と異なる記述＞＜「信教の自由」を行き過ぎて侵害＞と主張しているのか、幸福の科学グループ広報局に問い合わせてみました。しかし同広報局は、本紙が5月31日に掲載したマンガ記事＜【ソコイジNEWS】幸福実現党の原発賛成デモに行ってみた!!＞について反省しない限り取材には応じないと回答してきたのみで、本紙が問題表現を撤回し謝罪した現在も、何の返答もありません。

■仰木の里住民が危惧する徳島・川島町のケース

川島特別支部のすぐ隣の民家にも「住民には布教からの自由　平穏な生活を営む権利がある．憲法13条・20条から」の看板

　幸福の科学が施設建設に際して周辺住民の強固な反対にあうのは、これが初めてではありません。学園側は那須甲は住民の理解も得られていると主張しているものの、教団施設に着いてはいまだに住民との対立や住民の反感が消えていないケースがあります。そのひとつが、大川隆法総裁の生誕地である徳島県川島町。「聖地・川島特別支部」（2003年完成）の周辺には、いまだに近隣住民による反対看板が設置されています。

「説明会が一度も開かれず、戸別訪問で説明があっただけ」

「そのときは休憩所だと説明されたのに、できてみたら完全な宗教施設だった」

「小さな町の狭い道路に大型バスで大量の信者がやってくるようになり、狭い道を広がって歩いたりして迷惑だ」

　川島町の情報は仰木の里住民の耳にも入っており、同様のことが仰木の里でも行われる可能性はないのかと心配する声も聞かれます。

■戸別訪問で切り崩し

　川島町では、幸福の科学の支部完成後にむしろ住民との対立が深刻化。そのため地元自治会は、地元に転入してきた川島特別支部の支部長一家の自治会加入を拒否しました。

川島特別支部に参拝する信者たち

「すると支部長は、自分の子供が地元の運動会などで不利益を被ると主張して、自治会加入に賛成する署名を求めて反対派の主だった住民以外の家を戸別訪問した。それで過半数が賛成したというんです。高齢者も多い土地で、宗教団体に戸別訪問されたら、みんな逆らえない。自治会で反対を検討しているときに、そんな形で勝手に“多数決”を取られたため、自治会は解散しました。その後、支部長側についた自治会関係者が代表となって同じ名前の自治会を新たに立ち上げ、いまでは幸福の科学の支部長自身が自治会長になっています」（川島町の住民）

　本紙・藤倉が支部長に直撃すると、現在の自治会長でもある支部長はこう主張していました。

「当時の自治会長が勝手に自治会を解散したんですよ。私が解散させたんじゃありませんよ」

■警察沙汰も

「施設完成後、教団関係者が勝手に反対看板を撤去したり壊したりした。住民の自宅の敷地にあったものを、ですよ。立派な犯罪だと思うのですが、被害届を出しても警察は動いてくれなかった。それどころか、逆に住民が幸福の科学から“暴力行為”を理由に被害届を出され、警察沙汰になりました」（川島町の住民）

反対看板をめぐって言い合いをする教団関係者と住民

　“警察沙汰”になったのは、2008年。反対看板を設置していた住民の家に教団関係者が抗議に来た際、住民が教団関係者との会話を打ち切って家のドアを閉めようとしたところ、教団関係者が手でドアを押さえて妨害。住民がその手を払ってドアを閉めると、教団関係者が傷害事件として警察に被害届を出した、というものです。住民は最終的に不起訴になりましたが、検察での事情聴取を受けるなど、精神的にかなりダメージを受けたといいます。

「ほかにも、反対看板のせいで教団は1000万円を下らない損害を被ったと言って、看板撤去を求める内容証明郵便が来たり、自分は教団の弁護士ではなく第三者だと自称する弁護士が出てきて『カネで解決できませんか（金を払うから反対運動をやめてくれないか、という趣旨）』と言ってきたこともあった。こちらはみんな、弁護士だの内容証明だのなんて縁がない、田舎の人間ですよ。そりゃ震え上がりますよ」（川島町の住民）

　またある住民は、2004年に幸福の科学の機関誌『ザ・リバティ』の記者から「反対の看板を設置すれば生活できないようにしてやるぞ」と脅迫されたと語っています。ちなみにこの記者は、後に幸福実現党の役員も務めています。

■“幻の週刊誌報道”と教団の言い分

　2009年、川島町のトラブルをある週刊誌が報じようとしたことがあります。同誌の編集部が幸福の科学に事実関係の確認をしようとしたところ、幸福の科学から、支部長が自治会加入を拒否されてどれほどの不利益を被ったかなどの説明が送られてきました。この中で幸福の科学は、自分たちが住民に十分な説明を出来なかったとすれば、その理由は住民側にあると主張。住民に突きつけた「1000万円を下らない損害」については「極めて控えめな額」で、『ザ・リバティ』記者による脅迫まがい行為は「なかったと確信」としていました。

　そして回答の最後に週刊誌の編集部に対して、裁判で「長く争うことは望まない」といった表現で釘を刺し、結果的に週刊誌側は記事の掲載を断念しました。

　川島町のケースについては、幸福の科学側の言い分も含めてさらに詳しくリポートしたいと思っています。しかし前述のとおり、本紙はまだ幸福の科学から“取材解禁”の連絡を受けていません。教団側の言い分を取材できるかどうか、もう少し試みてからにします。

■地元民も語りたがらない東京・白金のケース

　幸福の科学の「教祖殿」「大悟館」（2000年完成）がある東京都港区・白金でも、建設時に住民の反対がありました。

「当時教団は、反対運動の中心的立場にあった住民だけを狙い撃ちにして、訴訟をほのめかす内容証明郵便を送りつけた。反対派の主だった住民を個別に攻められ、反対運動は萎んでしまった。裁判なんか嫌だから、これ以上は話したくない」（白金の住民）

　反対派住民の中心人物に対して個別にプレッシャーをかけるというやり方は、川島町のケースと共通しています。

「建設時の説明の時には、教団は建物の外壁に像などは設置しないと言っていた。でも教祖殿が完成して何年か経ったら、でかい仏像とか、何やらギリシャ彫刻みたいなでかい像が外壁に取り付けられた。住民には何の説明もありませんでしたよ。文句を言いたい気持ちはあるが、裁判だとか言われると面倒くさいから、何も言えない」（同）

　当初の説明と実際の施設の状態が違うという点も、川島町の住民の証言とよく似ています。

　教団は教祖殿周辺でも土地を買い足し、職員寮などを建設。おかげで白金はいまや、教団施設が密集する“幸福の科学タウン”になってしまっています。これに不快感を示す住民はいましたが、現在、表立って反対や抗議の声を挙げている住民はいないようです。

　明らかに反感を抱いている住民ですら多くを語りたがらない異常な状況。住民にとっては、幸福の科学のやり方が相当怖かったか、不満や反感があっても関わり合いになりたくないほど面倒な相手だったのでしょうか。

白金住民のせめてもの抵抗の痕跡か

■仰木の里はどうなる？

　川島町や白金のケースは、幸福の科学に100%の非があるとまでは言えないかもしれません。弁護士を使ったり内容証明郵便で訴訟に言及しながら個別の住民を切り崩すやり方も、それ自体は必ずしも違法とまでは言えないでしょう（内容や程度にもよりますが）。しかしだからといって何をしてもいいということにはなりません。こんな強引なことをしていれば、幸福の科学が近隣住民の理解を得ることなど無理でしょうし、施設完成後も住民の反感を残したままになるのも不思議ではありません。

幸福の科学学園那須校

　同様のことが仰木の里で行われるようなことがあれば、住民の反感・不信感はいま以上に増すでしょう。他地域のケースは宗教施設ですが、仰木の里で計画されているのは学校です。周辺住民から白眼視されたまま開校された学校に通う生徒たちは、はたして健全な社会性を身につけていくことができるのでしょうか。学校は、宗教施設以上に近隣住民の理解が必要な施設だろうと思います。

　幸福の科学が仰木の里で自らの悪評・悪印象を払拭できるのか。また、仰木の里の住民に幸福の科学から非常識な圧力がかかることはないのか。幸福の科学学園問題にいっそう目を向けていく必要があります。

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