福岡高裁で勧誘手法が違法と認定、巨額の賠償命令が下った統一協会。原告代理人弁護士への苦し紛れのSLAPPも不発に

統一協会による霊感商法の主力商品だった
“霊気を吸い取る壺”
今回の原告女性はこの種の壺（天運石）を540万円で購入させられた
（写真は高田馬場のビデオセンターに設置のもの）

3月16日、福岡高裁に於いて画期的な判決が出された。

福岡県在住の50歳代の元統一協会（統一教会）信者の女性（2006年に脱会）が、5億円近い額を聖本の購入や献金として騙し取られたとして提訴していた事件の控訴審判決だ。

一審の福岡地裁では8150万円の賠償額のみを認め、勧誘行為の違法性は退けたが、控訴審判決では、統一協会の勧誘手法を違法と認定、賠償額も請求に近い金額まで増額された。

また、原告側代理人弁護士に対して、被告の統一協会側は、証拠として提出された映像が捏造されたものだと“因縁”をつけ、弁護士3人に刑事告訴と懲戒請求をおこなっていたことが判った。

そして昨年11月、統一協会を「犯罪集団そのもの」と実名告発した霊感商法で逮捕歴のある現役信者が、その後本紙コメント欄に於いて何故か告発を全面撤回するという不可解な事案があったが、その件についてもこの裁判とのかかわりが浮かび上がった。

◆画期的判決

福岡高等裁判所の木村元昭裁判長は16日、統一協会に対し、一審判決を変更、元信者の女性に約3億9100万円を支払うよう命じる判決を下した。被告側からの控訴については、「理由がない」として棄却した。

被告側は原告女性の養母の預金3億円を狙い、養母が重い心臓病の手術を控えていた原告女性の不安に乗じ、『神の啓示』を持ち出したり、被告が信者の一人の訴える足の痛みについて聖本を載せて祈りを捧げ治すという演出を用いて養母の命を助けられると考えるようにさせ、創始者・文鮮明の言葉を記した“聖本”10冊を”その3億円で購入させたとして、木村裁判長は、その勧誘行為自体が違法だと認定した。

 多額の献金を強要されたことについて、木村裁判長は「不安を助長した勧誘行為により女性は自由意思を阻害されて献金した」と述べ、原告女性が「献金できてうれしい」と記した手紙についても、信者らの指示通りに書いた可能性が高いと指摘した。被告側の主張は悉く採用されなかった。

地裁の１審判決では３億円の聖本献金について「勧誘に畏怖して支払ったとは云えない」としており、勧誘行為の違法性については退けたが、高裁判決では「先祖の因縁が原因と不安を煽り勧誘。社会的相当性を逸脱しており違法」と断罪した。

また、慰謝料については、不法行為と認められる３億円献金及び霊能師の面談による各献金勧誘行為を、原告の不安や恐怖感を煽る形でおこなわれ多大な精神的被害を受けたとしてその精神的苦痛を慰藉するための慰謝料額として800万円を相当とした。

◆統一協会広報は「信者の信仰に基づく献金」と嘯く

「献金は自由意思だった」などと呆れた主張を展開していた統一協会。
高裁判決後、統一協会広報局は各メディアの取材に対し、「信者の信仰に基づく献金との主張が認められず誠に遺憾。判決文を検討し、今後の対応を決めたい」とコメントしている。


◆なりふり構わないSLAPP、刑事告訴や懲戒請求も


控訴審が進む中、公判で提出された原告の養母の日記から、養母がこの献金について全く知らず同意もしていなかったことが証明され、一審判決が覆る公算が高まってきた。それに対して焦った統一協会側は昨年11月16日、原告側代理人である平和の森法律事務所の大神周一弁護士、平田広志弁護士、西岡里恵弁護士を刑事告訴したばかりか、福岡県弁護士網紀委員会に対し懲戒請求を申し立てた。

一晩で養母の預金3億円の献金を承知させられた際の、因縁トークの立証として提出された原理講師のDVDの映像が捏造されたものだとの主張だ。
懲戒請求者は梶栗玄太郎日本統一協会代表者代表役員で、懲戒請求者代理人は、福本修也弁護士・今井三義弁護士・鐘築優弁護士・和島登志雄弁護士・宮入陽子弁護士・堀川敦弁護士と、お馴染みの信者弁護士らが名を連ねている。


刑事告訴は、昨年12月末に不起訴処分となっている。

◆大神弁護士は語る

今回画期的判決を勝ち取った原告側代理人の大神周一弁護士に話を訊いた。

―高裁判決の感想は？

「本来これは一審判決で認められなければいけなかった」

「3億円献金は、沖縄の信者が沖縄の幹部を連れてきていたその晩に起こったこと。“聖本献金の摂理”の40日路程の最終の期間だった。沖縄の教区は全国で当初中間くらいの順位だったが、最後の方は72教区のうちの71番目というくらいに落ちていて、幹部は責任を問われかねなかった。そういう状況の中、あと数日で聖本献金摂理の40日路程が終わるという時期だった」「1日で3億ということだから、それだけで普通ではないということは明らかだった。それなのに一審ではこちらの主張を退けて、『信仰に基づく献金に近い。強制的に献金させたわけではない』とした」

「初日に3億、4年間に渡って約1億、最後の1年間に8千万円という流れだった。8千万については浅見清子（アサミシズコ）という霊能師による因縁トークのメモを会計係が筆記して渡していた。それがたくさんあり、その凄い因縁トーク集には『お婆ちゃんの字は偽造できる、偽造しなさい』、『ある郵便局では印鑑が違っても下ろせた』などとの記述があって、それで一審では8千万の献金の直接立証のあるものについてのみ認めた」


「当然、全てを違法行為であると認めざるを得ないというのは当たり前のことなんですよ」

―一審でこういう判決が出ていて然るべきだったと？

「そうです」


―統一協会側は上告すると思いますか

「出方は判らないが、金利だけでも相当な額になる。一審で認定された8千万円、金利を含めると1億円近くになるが、これは既に支払われている。最高裁で争っても被告に勝ち目はない。余程の事がないと覆らない。今回認められた3億は10年以上経っているから金利だけでも既に1億5千万、足して4億5千万円、支払い済みの1億を合わせると5億5千万くらいになる。そういう金利をケチる意味で上告してこないかもしれません。個人で統一協会を相手とした訴訟の賠償額としては過去最高額になるし、信者に対する説明がつかないので内部的な対応のために上告してくるかもしれない。上告してきたとしても、こちらは金利の高い銀行に預けてあると思うだけですが」



―懲戒請求については

「まだ結論は出ていませんが、もうじき『懲戒せず』になると思います」



上告について「こちらは金利の高い銀行に預けてあると思うだけですが」と余裕の大神弁護士、勝ち目のない裁判を続けるのか統一協会側の出方が注目される。



◆「犯罪集団」実名告発信者の唐突な心変わりに、この裁判の圧力が？

本紙2011年11月21日既報記事“犯罪集団そのもの”　霊感商法で逮捕の現役信者が”統一教会の現実”を実名告発！”で取り上げた、霊感商法で逮捕歴のある沖縄在住の統一協会信者・金城正彦氏が、急に告発自体を撤回した件についても、この裁判との関係が浮かび上がった。

【やや日刊カルト新聞 コメント欄　2011年12月1日】

天一国市民さんのコメント...

やや日刊カルト新聞の編集者、並びに読者の皆様、この度は、現役の統一教会信者である私、金城正彦が、統一教会が犯罪集団であるかの様な印象を与える告発記事を書きましたが、私自身、深く考察した結果、この２０１１年１１月１９日付けの記事の内容を事実誤認である為、全面撤回したいと思いコメント致しました。

統一教会は私にとって命の恩人です！命の恩人である統一教会を窮地に追い込む事は決して私の真意ではありません・・・

２０年を超える信仰生活の中で、私自身、被害妄想が拡大していく中で、感情のコントロールを失い、私の独断と偏見を持って、あのような表現になってしまいました。

私自身のブログ「世界日報を愛する統一教会員」の読者の皆さまと「やや日刊カルト新聞」の編集者、並びに読者の皆様に誤解を与えてしまった事を、この場をお借りして、ご連絡させていただきます。

２０１１年　１２月１日（木）

沖縄教区　沖縄教会　所属　金城正彦

金城氏は一審及び控訴審の公判に於いて、3億の献金の後、1億を献金させたうちの1千万円の事案に絡んでいた。消費者金融のアイフルから1.000万円を借り入れ、金城氏本人が主債務者となり、原告女性に連帯保証・抵当権設定をさせた人物として名前が挙がっていたのだ（弁済済みのため原告は請求を取り下げた）。この1千万円も実際には統一協会が借りる１千万円であり、金城氏は名義人にさせられたに過ぎないと指摘されている。

原告側は、金城氏の統一協会に対する「犯罪集団そのもの」との告発を、組織ぐるみの違法行為の証拠として、提出していた。

原告側は、以前から金城氏が摘発された沖縄・天守堂の刑事事件の一切の記録を裁判で提出しており、重ねて被告側の主張を全面否定する格好となった金城氏の告発文を証拠提出したのが2011年11月29日、被告代理人の福本弁護士が金城氏の撤回文を提出したのが翌30日の結審日、そして金城氏が本紙コメント欄に於いて告発を撤回したのが翌12月1日だ。裁判で不利になる材料を提供してしまった金城氏に対し、統一協会側から圧力が掛かったことは明白であろう。

信者の勇気ある告発も、巨額の損害賠償裁判に不利になるからと、握り潰す統一協会に、自浄作用などは望むべくもない。

末端信者は、このような人の弱みにつけ込み何億ものお金を騙し盗る組織の手口を「正しいやり方」「真っ当なことだ」と、それでも是認するのだろうか。広報が嘯く『信者の信仰に基づく献金との主張』を、「その通りだ」と拍手喝采するのか。

そうであるとするならば、それは最早“まとも”な感覚ではない。

◆全国各地で訴訟

今月末には札幌地裁に於いて、青春を返せ訴訟第2陣第2次訴訟の判決公判があり「 統一協会の布教活動が対象者の思想信条の自由を侵害する憲法違反の行為であること」が司法の場で認定されるか注目が集まっている。

また鳥取地裁米子支部では、統一協会の違法行為を放置しつづける国の責任（宗教法人法上の国の責務）を問う裁判も提起されている。

日本で好き放題荒稼ぎしてきたカルト団体への包囲網は、確実に狭まっている。