『ゆきゆきて、地球神軍』、幸福の科学の圧力で上映見送り＝大阪芸術大学

「悪魔」であるジャーナリストを公道で取り囲み取材を妨害する幸福の科学職員ら（『ゆきゆきて、地球神軍』より）

大阪芸術大学は2月6日、映像学科の学生が幸福の科学をテーマとして制作したドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、地球神軍』について、同大学の卒業制作展での上映を見送ると発表した。同作品については、上映が告知された1月27日以降、幸福の科学が監督である学生に対し上映中止を要求。従わなければ法的措置も辞さないなどと恫喝した上、上映を告知した監督や卒業制作展実行委員会のTwitterアカウントが凍結やロックに追い込まれる事態に発展していた。

『ゆきゆきて、地球神軍』は、映像学科所属の学生、成田天音氏が監督を務める91分の長編ドキュメンタリー作品。幸福の科学信者の活動に密着するとともに、教団から悪魔呼ばわりされているジャーナリストへのインタビューなども交え、多面的に教団を捉えた内容。当初は2月11・12、3月3日に卒業制作展「DFA2018」で上映される予定だった。

しかし幸福の科学が成田氏に対して上映中止を要求し、法的措置を予告して恫喝。成田氏のTwitterアカウントを凍結に追い込み、「DFA2018」のTwitterアカウントもロックされた。

この騒ぎを報じたネットメディア『バザップ』の記事で紹介されている教団のコメントによると、教団は「被撮影者に対する説明の虚偽および無承諾撮影」「被撮影者らの肖像権、プライバシー権の侵害等、違法性ないし不当性がある」と主張している。

こうした動きを受け、成田氏の指導教員で伝説的ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』の監督である原一男氏が、成田氏に援護射撃。Twitterでこう綴った。

担当教師の原一男です。
学生が一所懸命に作った作品です。
教団がアカウントを凍結…ですか！
随分悪どいやり口ですよね。
批判されたら真っ当に反論すればいいだけのことなのに❗️
ツイッターをやられてる皆さんの中で心ある方は、この学生を励ましてやってくれませんか❗️
圧力にまけるな❗️と。 https://t.co/RJv0A4C63f

— 原一男 (@kazu19451) 2018年1月30日

しかし大学側は2月6日までに上映見送りを決定。「DFA2018」実行委員会がTwitterに、大森一樹・映像学科長名で告知した。

〈上映を予定しておりました『ゆきゆきて、地球神軍』は、本編一部に映像使用許諾のプロセスで問題検証の要があると判断いたしましたので、今回の上映は見合わせることにいたしました。深くお詫びいたします。大阪芸術大学　映像学科長　大森一樹〉（DFA2018実行委員会）

一方、成田氏自身はTwitterで、上映見送りの経緯等について、こう説明した。

〈ご報告遅くなり申し訳ありません。
大学での学内展、学外展は会場の混乱や他学生の作品上映への支障を考慮し、話し合いの結果、上映見送りを決定しました。
また在学期間中の上映は行いません。
卒業し、学生でなくなる4月1日まで皆様の有難い応援に答えられるための準備に専念したいと思います。〉

大学、成田氏ともに、教団側の「被撮影者に対する説明の虚偽および無承諾撮影」「被撮影者らの肖像権、プライバシー権の侵害等、違法性ないし不当性がある」とする主張を受け入れたわけではないものの、それぞれ「問題検証の要がある」「会場の混乱や他学生の作品上映への支障を考慮」といった理由で上映見送りを決めた形だ。

同作品に出演している本紙・藤倉善郎総裁のコメント。

「大学が抗議に屈したことは残念としか言いようがない。しかし卒業制作展の実行委員会まで一時的にTwitterを使用不能にされており、すでに無関係の学生が巻き込まれていた。混乱を避ける意味でも、大学の判断はやむを得なかったのかもしれない。責められるべきは大学よりも、恫喝等によって上映を中止に追い込んだ幸福の科学のやり口の方だろう。同教団の反社会的な体質が改めて浮き彫りになった。だからこそ、こうした教団の実態に迫る『ゆきゆきて、地球神軍』というドキュメンタリーの社会的な価値はいっそう増したと言える。成田氏自身が卒業後の上映を宣言しているので、その実現に向けて応援していきたい」

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◇参考サイト
togetter／幸福の科学ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、地球神軍』公開。告知後すぐに幸福の科学から上映取りやめの抗議と圧力。監督のツイッターアカウントが凍結された。
togetter／【上映中止】幸福の科学ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、地球神軍』公開の告知後すぐに幸福の科学教団が上映取りやめを求め、大学への強い抗議と肖像権侵害での法的措置を警告していた。