泡沫候補（？）2人が地元メディアに猛抗議＝福岡市長選＆沖縄県知事選



抗議文を掲載する内海昭徳氏のサイト

 　10月31日に告示された福岡市長選挙（14日投開票）の立候補者の一人と、11月11日告示（28日投開票）の沖縄県知事選挙の立候補者の一人が、それぞれ、自分を公開討論会に呼ばなかったメディアに対して猛抗議しています。お2人は、互いにはたぶん関係ない者同士ですが、いずれも本紙にその名が登場したことがある方たちで……。

■「非常に強い憤り」「謝罪を要求」

　まず福岡市長選挙の候補者である内海昭徳氏。この方は、本紙では＜福岡市長選に自己啓発セミナー関係者が立候補＞と＜福岡市長選候補者をめぐり、選挙情報wikiで編集合戦＞の2本の記事で登場しています。Noh Jesu（盧在洙）氏という韓国人を実質的指導者として自己啓発セミナーのようなことをしている団体の関係者です。

　10月27日、福岡市長選告示を前に、RKB毎日放送が『今日感テレビスペシャル「146万人市民との"約束"は」～徹底討論!福岡市長選挙～』と題した討論会を主催し、放送しました。ところがRKBは候補予定者8人のうち6人しか呼んでおらず、呼ばれなかった内海氏が猛抗議。28日に「緊急記者会見」を開き、マニフェストを発表するとともに、10分近くにわたってRKB批判を語りました。

　いわく、「非常に強い憤りを感じます」「再発防止を」「謝罪を要求したい」「もう一度、8人全員で番組を」等々。



　さらに28日に内海氏は、自らの公式サイトにも＜10月28日 緊急メッセージ　「民主主義これでいいのか！？」＞を掲載しました。これによると、RKB側は内海氏に対して「時間の問題とスペースの問題のためお呼びしなかった」と説明したとのこと。内海氏は地元テレビから、「時間とスペース」を割く優先度が8人中の6番目にも入らない、と捉えられていたようです。

■野次や罵声は禁止です

　さて、メディアに猛抗議しているもう一人は、沖縄県知事選挙に立候補予定の金城竜郎氏（幸福実現党）。この方は、本紙＜沖縄知事選めぐり大江議員と幸福実現党が対立＞で登場された方です。幸福の科学の信者ではないのに幸福実現党唯一の現職国会議員という立場にある大江康弘参議院議員が、沖縄県知事選で幸福実現党は独自候補を立てずに、現職の仲井真弘多氏を支援すべきだと主張したものの、党は金城氏の擁立を決定してしまいました。

　11月1日、沖縄タイムス社と琉球放送が立候補予定者による討論会を開催し、琉球放送がこれを生放送。ところが金城氏はこれに呼ばれなかったようです。で、その金城氏がとった抗議行動が、生放送直前の会場で立ちあがってのゲリラ演説。

　主催者側の関係者らしき人が制止しようとしますが、会場からは「聞いてやれよ！」という声や拍手。一瞬「退場させろ」という声も入っていたりします。ちょうどいいタイミングで、

「野次や罵声は禁止です。なお主催者の指示に従わない方は退場していただくことになります」

　という会場アナウンスと声が重なってしまい、金城氏が何しゃべってんだかよくわかりません。





　この討論会、主催者の沖縄タイムス社は、こんな感じで告知していました。

【沖縄タイムス】知事選立候補予定者　公開討論会
１１月１日　那覇市・パレット市民劇場
仲井真弘多氏・県知事　伊波洋一氏・前宜野湾市長

　沖縄タイムス社は、琉球放送（ＲＢＣ）と共催で、１１月２８日投開票の県知事選への立候補予定者公開討論会を開催します。今回の選挙は、現職の仲井真弘多氏（７１）と、前宜野湾市長の伊波洋一氏（５８）による事実上の一騎打ちとなります。討論会では、主要な立候補予定者に、米軍普天間飛行場の移設問題や経済振興策など、政策を大いに論じてもらいます。ご期待ください。当日は琉球放送が会場から生放送します。入場は無料。

▽とき　１１月１日（月）午後３時５５分―５時（午後３時半までに入場）
▽ところ　パレット市民劇場
▽司会・進行　中根学（沖縄タイムス社編集局長）、比嘉俊次（琉球放送キャスター）

　入場整理券は、１０月２７日から、沖縄タイムス本社と中・北部の両支社、琉球放送で配布します。（先着順）

主催　沖縄タイムス社、琉球放送

　「事実上の一騎打ち」とか「討論会では、主要な立候補予定者に」とか書いて、金城氏を呼ばないというのは、まさに「お前なんて眼中ないよ」と言い放っているようなもの。福岡市長選候補者の内海氏同様、金城氏も地元メディアから泡沫候補扱いされているわけです。

　しかも金城氏側は、討論会に出席させるよう事前に要請した上でも、なお出席させてもらえなかったようです。

■幸福実現党、BPOに人権救済を申し立て

BPOへの人権救済申立てを伝える幸福実現党サイト

　金城氏は、幸福実現党の公認候補予定者です。当然、この一件をめぐって幸福実現党がソッコーで動きます。

　討論会が行われたその日のうちに放送倫理・番組向上機構（BPO）に人権救済を申立て。そして翌日には党のサイトなどで＜沖縄県知事選報道における BPOへの人権救済の申立てについて＞というプレスリリースを配信しました。申立の対象は、討論会を主催した沖縄タイムス社、琉球放送の両者ではなく、討論会の放送を行った琉球放送だけのようです。

　申立の中で幸福実現党は、琉球放送の番組について、

＜憲法に保障された私・金城タツロー個人の「政治参加の自由」「表現の自由」（憲法21条1項）を著しく侵害する、極めて悪質なもの＞

　と非難。

＜選挙報道について客観的かつ公正なる報道をするよう厳しく勧告＞

　するよう、BPOに求めています。

泡沫候補のことばかり記事にしたがる某新聞も民主主義の敵か

■そうは言っても……

　今回の2つのケースは市長選と知事選。議会の選挙と違って、当選者は1人だけです。泡沫候補を除いて、多くの有権者が知りたいであろう情報に絞って、メディアが情報を伝えることは、さほど不当ではないかもしれません。しかしそれも一長一短で、有権者が判断する前にメディアが候補者をふるいにかけてしまうという構造自体は、不健全です。

　だからと言って、「泡沫候補」も含めた全候補者に完全に同等に扱わなければいけないという形式論だけがのさばるのも、好ましくはないでしょう。たとえば内海氏が関わる団体の実質的指導者のように、明らかに自己宣伝のために選挙を利用しようとしている人間（しかも参政権がない外国人）もいるからです。

　難しくて、答えが出ません。

　ちなみに本紙はむしろ、選挙関連記事では一般メディアが泡沫候補扱いしているような候補者のことばかり書いています。これは、別に彼らの「政治参加の自由」に配慮した結果ではありません。