幸福の科学・教祖の生誕地に新たな火種？

生誕館予定地

幸福の科学・大川隆法総裁の出生地として教団が“聖地”と呼ぶ、徳島県吉野川市の川島町。2003年に「聖地川島特別支部」が完成して以来、近隣住民の一部がいまだ反対運動を続けていますが、教団は同町内に「聖地エル・カンターレ生誕館」の建設を決定（2016年完成予定）し、お布施を集め始め、昨年末には同町内に約2万平方メートルの土地を取得しました。しかし近隣住民からは、「話が具体化たら反対することになる」との声も。教祖の生誕地に、またひとつ新たな火種の予感です。


■支部長が交代しても挨拶もない？

JR徳島線・阿波川島駅前にある「聖地川島特別支部」は、2003年に完成。同じく駅前にある大川隆法総裁の生家（教団所有の空き家として現存）から徒歩数分の場所で、建設当初、教団は周辺住民に対して「信者の休憩所を作る」などと説明していました。ところが、実際にできたのは場違いな外観の礼拝施設を備えた「支部」。さらに当時は下水道が整備されていなかったことから、大量の信者がバスで乗り付けて参拝する施設から下水の異臭が漂ったり、大量のゴミが出るなどして、近隣住民の反感を買いました。結果、本紙が〈幸福の科学の“住民対策実績”と大津市の学園問題〉で報じたように、住民が設置した看板を教団関係者が無断で撤去し破壊するなどの犯罪行為や、教団職員の戸別訪問を断ってドアを閉めた住民に職員が「手を叩かれた」と主張し警察沙汰にするなどといったトラブルが続き、支部に反対する趣旨の看板が現在も掲げられている状態です。

聖地川島特別支部

「支部を巡る騒動で自治会も分裂してしまい、毎年みなで行っていた温泉旅行もなくなってしまった」

自治会の中で、支部に反対する住民、教団に取り込まれた住民、信者相手に便乗商売をする住民、とくだん賛成でもないが反対でもなく現状に流される住民など、立場の違いによる温度差で、町内の人間関係もだいぶ変わってしまったようです。

「幸福の科学のおかげで、わしらずいぶん不幸になったわ。あいつら（信者たち）は幸福かしらんけど」（反対派住民）

反対派住民と教団とのトラブルは、現在は小康状態。大きな揉め事はないまま、支部の隣の民家に「住民には布教からの自由　平穏な生活を営む権利がある．憲法13条・20条から」と書かれた看板がいくつか掲げられています。

「最近、支部開設当初からの支部長がよそに行って、新しい支部長が来たらしい。でも挨拶にも来んし、新しい支部長が誰なのか、なんという名前なのかもわからない」

反対派住民のそんな声を聞いて、本紙・藤倉は直接支部に行き、「Oさん（前支部長）いますか？」と聞いてみました。女性信者が、

「あ、いま支部長がおりますので」

と言い、そこで出てきたのは、Oさんとは別の体格のいい男性職員。

「いまOは外出中です」

─こちらにはもういないんですか？

「いま外出中なんです」

飽くまでも外出中だと言い張ります。次は、反対派ではない住民に聞いてみると、

「なんか鳴門の支部に異動になったと、（O氏の）奥さんが言うとったよ」

別の反対派ではない住民は、

「東京に行ったと聞いたけど？」

さらに反対派の住民は、

「人づてで、京都か滋賀の方に行ったと聞いた」

新しい支部長らしき人物は、すでに支部にいますが、あまりご近所と交流がないようです。

「新しい支部長さんの名前？　それらしき人は時々見かけるけど、名前は知らない」（反対派ではない住民）

「どうせ近所の一般住民は無視して、地域の政治家とか有力者にだけ挨拶に行ってるんじゃないのか」（反対派住民）

■「信者がたくさん来て儲かる」というふれ込み

しかし幸福の科学では、“地域サービス”もどきのこともやっています。それが、川島特別支部が信者向けに行なっている「スタンプラリー」。全国から参拝に来る信者たちが近隣の商店を回らせてスタンプをもらうというもので、加盟商店は全8店。スタンプを5つ集めると川島特別支部で景品をもらえます。

本紙藤倉もぜひこのスタンプラリーをやってみたいと、川島特別支部で申し出たのですが「会員（信者）限定なので」と断られてしまいました。しかし対象商店で用紙をゲットし、勝手にスタンプラリー、スタート。

最初は川島特別支部の隣にある靴屋さん。下駄とか運動靴とかを売っています。遠方から川島町まで来て、下駄や靴なんか買うでしょうか。次は、地元の小さなスーパー。暑かったのでジュースを買いました。次は本屋さん。大川総裁の本がたくさん置いてありましたが、持ってるのでもういりません。次は仕出し料理屋さん。仕出し専門なので、予約もない人がいきなり行っても買えるものはありません。次は学生服屋さん。大川総裁の出身中学校のボタンを巾着に入れてお守り風にしたものを１つ350円で売っています。次は電気屋さん。週末はお休みみたいです。次は食料品店。お菓子や野菜を売っています。草まんじゅうを買いました。

「うちには、っていうかこの辺のどの店も、信者さんがお土産にできるようなものは何も売ってないからねえ。でも、この焼肉のタレは、川島町特産のにんにくを使ったものなので、信者さんに勧めてます」（お店の人）

というわけで、焼肉のタレも買いました。もうひとつ、スーパーのようなものが対象商店だったのですが、歩いて行くのはちょっと距離があったので行くのやめました。

店を回りながら話を聞いたのですが、スタンプラリーはこんな状態。

「あんまり来ないね。遠くから来た信者さんが買うようなもの、うちに置いてないから」

「あんまり来ないし、来たとしても、何も買わずにスタンプだけもらっていくような信者も多い」

「そもそも、最近ぜんぜん信者が来ない」

「売上が増えるとか、そういう影響は何もない」

商店の人たちの話を総合すると、「別に何か迷惑を被っているわけでもないから、幸福の科学に反対はしないけど、信者が来るようになったからって儲かるようになるとかそういうことはない」とのことです。

一方、2016年の完成を目指して土地を取得した「生誕館」予定地は、阿波川島駅から1km強の位置。これについて近隣の人々は、信者たちから非公式に「これで信者が集まるようになって、町が活気づく」などと説明されているといいます。中には、幸福の科学の信者を当て込んで駅前に土産屋を開こうとしている会社経営者もいるとか。

「ぜったい儲からないから、やめた方がいいと思うんですけどねえ」（ある商店主）

同感です。

■産廃の脇で参拝？

画面中央の白いのが産廃の山

さて、問題の「生誕館」予定地。山の斜面を削って平地にしたような土地で、教団が取得した面積は約2万平方メートルです。信者のブログなどによると、ここには収容人数1000人規模の礼拝施設を作る他、オープン後も第2期・第3期工事を行なって「大聖地建設」を行なうとされています。

現在、予定地の土地の前には金網などで柵が作られ、今年6月に公開された映画『ファイナル・ジャッジメント』や幸福実現党のポスターが貼られています。大川総裁の「御生誕祭」ののぼりも掲げられています。

山から川島町を見下ろす好立地かと思いきや、すぐ隣は産業廃棄物の集積場のようなものが。予定地から川島町の中心部方向を眺めようとすると、真っ白いゴミ袋の山がいやでも視界に入ってきます。プラスティック系の廃棄物が中心のようで、特に異臭などはありません。しかし、この土地に何階建て物施設を作ったら、窓からはよりいっそうゴミの山が目につきそうです。

このゴミの山は、GoogleMapでもはっきりと確認できます。


大きな地図で見る

地元住民によると、土地取得後の今年初め、大川総裁は自ら川島町を訪れたと言います。

「かつての同級生の家に挨拶に来たことで、隆（大川総裁）が来たということがわかった。でも、いままでそんなことしたことなかったのが急に来たというのも変な話。たぶん、生誕感のために買った土地を視察しにきたのでは」（住民）

仮にその通りなら、予定地が産廃の山の隣にあることもご覧になったと思うのですが、それでOK出しちゃったのでしょうか。

■相変わらず住民には説明なし

「生誕館」予定地から見て産廃集積場のそのさらに向こうには、閉鎖済みのゴミ処理場があります。

予定地のすぐそばの民家で話を聞いてみると、

「ゴミ処理場には、近隣住民はずっと反対してきた。もう閉鎖されたが、このあと何を作るのかで、まだ話し合いなどをしていかなければならない」

目の前の土地を幸福の科学が買ったことについて尋ねると、

「あそこまでポスターやのぼりを出してるから、幸福の科学が買ったのだということは見ればわかる。ただ、フェンスまで作ってポスターを貼りまくっているのに、近隣には何の説明も挨拶もない。近所の噂で、あそこに大川隆法さんの生誕館を作るということは聞いているけど」

登記簿上、幸福の科学がこの土地を取得した日付は2011年12月27日となっています。もう半年以上過ぎているのですが、それでもなお、近隣住民には説明どころか挨拶の一つもないようです。

「ポスターやら何やら貼り出す前に、まず挨拶に来て説明するのが筋じゃないのか。この分じゃ、建設が具体化したら（住民側は）反対することになると思う。いまはとりあえずゴミ処理場の問題があるけど、その次は幸福の科学問題ということになるだろうな」（同）

現在、大津市で建設予定の「幸福の科学学園関西校」でも、川島特別支部建設の祭も、教団は近隣住民への説明をろくにしないまま行政や地元有力者とのやりとりで話を進めようとし、反対しない人々にはにこやかに、反対する人々に対してはときに恫喝も交えた手法で黙らせたり無視したりしてきました。教団内部では、学園の副理事長が大津市の住民を「左翼」「唯物論者」「最強最大の敵」などと罵り、地元議会で学園建設問題が取り上げられるのを「事前に（情報を）キャッチして潰している」とまで発言しました。

こうした態度が、不必要に住民の反感を煽ることにつながっているのですが、「生誕館」予定地でも同じようなことになるのでしょうか。